公務員試験 H29年 国家一般職(行政) No.54解説

 問 題     

国際政治経済制度に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.1952 年に発足した欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)を起源に持つ欧州共同体(EC)は,地域的な経済協力機構として,加盟国を拡大させ続けた。1993 年に欧州連合(EU)に生まれ変わり,単一市場は北欧や東欧にまで広がった。ただし,共通の外交・安全保障政策は採られていない。

2.東南アジア諸国連合(ASEAN)は,地域の安定を図りながら共産主義の脅威に対抗することを目的として,1967 年に設立された。域内の著しい経済成長を背景として,様々な広域地域制度を推進しており,その結果,アジア太平洋経済協力(APEC)は消滅した。

3.1995 年に設立された世界貿易機関(WTO)は,貿易に関する規則が遵守されているかを監視し,貿易紛争を解決する国連の関連機関である。WTO の設立に伴って紛争解決手続は強化されたが,サービス貿易や知的財産権等の新分野での規則作りは回避された。

4.1994 年に発効した「海洋法に関する国際連合条約」は,伝統的な海洋とその資源の自由な利用の原則を修正し,領海,排他的経済水域,大陸棚等に関する規則を整備した。これによって新しい海洋法秩序が生まれた。

5.国際的な経済格差を背景にして,20 世紀後半から途上国に対する政府開発援助(ODA)が活発に行われるようになった。1961 年に国連経済社会理事会(ECOSOC)の傘下に開発援助委員会(DAC)が設立され,援助の方針等も定められるようになった。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

選択肢 1 ですが
EU は「共通外交・安全保障政策(CFSP= Common Foreign and Security Policy)」等、欧州の外交・安全保障面の共通利益のためのルールを策定しています。「共通の外交・安全保障政策は採られていない」わけではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
APEC は試験時点において継続中です。「消滅した」わけではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
WTO の目的は目的は自由貿易等の推進です。物品貿易だけでなく金融、情報通信、知的財産権、サービス貿易も含めた、包括的国際通商ルールを協議する場、機関です。「サービス貿易や知的財産権等の新分野での規則作りは回避された」わけではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。
別名「海の憲法」と呼ばれる「海洋法に関する国際連合条約」についての記述です。

選択肢 5 ですが
DAC は、政府開発援助 ODA に関する組織として、「OECD」発足に伴い、開発援助グループ DAG から改組した組織です。ECOSOC 傘下に設立されたわけではありません。DAC は、ODA等の流れに関するデータの収集・分析を通じた資金のモニタリング,評価,報告及び促進を行っています。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4 です。

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