公務員試験 H29年 国家一般職(行政) No.52解説

 問 題     

国際政治の課題に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.1968 年に成立した「核兵器の不拡散に関する条約」(NPT)は,既に核を保有していた国を含めた全ての国に,核兵器の開発を禁じ,削減を義務付けた。また,NPT 体制は,核兵器用の技術や原料の拡散を防ぐ様々な制度的枠組みも提供してきており,インドやパキスタン等の加盟国による核実験を未然に防いだことから,同体制の功績は大きいと評価されている。

2.1992 年のB.ブトロス=ガリ国連事務総長による「平和への課題」は,国連の紛争対応能力を向上させるための様々な提言を含む報告書である。同報告書は,国連の平和機能を「予防外交」,「平和創造」,「平和維持」,「紛争後平和構築」に整理し,その強化方法について述べている。この「紛争後平和構築」には,紛争後の武装解除や難民の帰還等が含まれる。

3.多国間援助と二国間援助からなる政府開発援助(ODA)は,有償資金協力と無償資金協力(贈与)の2 種類から成り立っており,技術協力は含んでいない。2000 年に設定されたミレニアム開発目標(MDGs)において,援助供与国側には,努力目標として,ODA を国民総所得の0.1 % まで増額するという数値目標が与えられた。

4.難民の国際的保護と難民問題の恒久的解決を実現するため,国連総会は1950 年に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)を設立した。1965 年に採択された「難民の地位に関する条約」は,難民の宗教の自由や結社の自由等を認める画期的な内容であったが,日本はこの条約にいまだ加入していない。

5.大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを究極の目標とする「気候変動に関する国際連合枠組条約」が1992 年に採択され,この条約に基づき,国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)が1995 年から毎年開催されている。2005 年の締約国会議ではパリ協定が採択され, 1年以内に世界の平均気温の上昇を停止することを求めた。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

選択肢 1 ですが
核兵器不拡散条約は「核兵器保有国を増やさないために、核物質の兵器転用防止を目指した条約」です。開発を禁じ、削減を義務付けた条約ではありません。また、インドやパキスタンの核実験を未然に防いだわけでもありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当です。
ガリ国連事務総長による 1992 年の「平和への課題」についての記述です。

選択肢 3 ですが
ODA の二国間援助は、「贈与」と「政府貸付」に分けることができます。「贈与」は途上国に対し無償提供される協力です。贈与には、「無償資金協力」と「技術協力」があります。「技術協力は含んでいない」という点が妥当ではありません。また、数値目標として「GNI 比 0.7%」が掲げられています。「0.1%」ではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
「難民の地位に関する条約」に日本は 1981 年に加入しています。「条約にいまだ加入していない」わけではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
「1年以内に世界の平均気温の上昇を停止する」は、さすがに無理だと感じるのではないでしょうか。パリ協定では、長期目標として平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5 ℃ に抑える努力追求を掲げました。参加国は温室効果ガス削減・抑制目標達成に向けた努力を行うという仕組みです。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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