公務員試験 H29年 国家一般職(行政) No.27解説

 問 題     

債権譲渡に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。ただし,争いのあるものは判例の見解による。

1.債権の譲渡を禁止する特約は,善意の第三者に対抗することはできないが,外観に対する正当な信頼を保護するため,過失は悪意と同様に扱うべきであるから,譲受人が,譲渡禁止特約の存在を知らずに債権を譲り受けた場合であっても,これにつき譲受人に過失があるときには,その債権を取得することはできない。

2.差押債権者が債権の譲渡を禁止する特約の付いている債権を差し押さえて転付命令を得た場合,差押債権者が譲渡禁止特約の存在を知って債権を差し押さえたときであっても,差押債権者への債権の移転は有効である。

3.指名債権譲渡は,譲渡人から債務者に対する確定日付のある証書による通知又は確定日付のある証書による債務者の承諾がなければ,債務者に対抗することができない。

4.指名債権が二重に譲渡された場合において,どちらの指名債権譲渡についても譲渡人から債務者に対する確定日付のある証書による通知があるときには,譲受人間の優劣は,その確定日付の先後で決定される。

5.現在存在している債権だけではなく将来発生すべき債権についても債権譲渡する契約を締結することができるが,将来発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約にあっては,契約締結時において債権発生の可能性が低い場合には,その債権譲渡契約は無効となる。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

※改正ポイント!
選択肢 1 ですが
改正後民法 466 条 2 項:当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。を確認しておきましょう。譲渡制限の意思表示があっても、原則債権の譲渡は有効です。選択肢 1 は誤りです。

さらに、第 3,4 項が:
3 前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。

4 前項の規定は、債務者が債務を履行しない場合において、同項に規定する第三者が相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、その債務者については、適用しない。という規定になっています。合わせておさえておきましょう!

選択肢 2 は妥当です。
最判 S45.4.10 です。善意悪意を問わず、差押え等の強制執行においては有効と判示しています。

選択肢 3 ですが
改正民法 467 条によれば
債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。

2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者「以外」の第三者に対抗することができない。とあります。
確定日付のある証書が必要なのは、債務者「以外」の第三者です。選択肢 3 は誤りです。

※民法改正により、「指名債権」という用語は用いられなくなりました。

選択肢 4 ですが
判例によれば、債権の二重譲渡において、共に確定日付ある証書による通知がある場合「通知の到達の先後」により優劣が決まります。確定日付の先後ではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
最判 H11.1.29 によれば、「将来発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約時において、目的債権の発生の可能性が低かったことは、契約効力を当然には左右しない」と考えられています。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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