公務員試験 H29年 国家一般職(行政) No.25解説

 問 題     

譲渡担保に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。ただし,争いのあるものは判例の見解による。

1.譲渡担保は,民法の予定していない特殊な形態の物的担保であり,判例によって認められてきたものであるが,現在では,譲渡担保契約に関する法律が制定され,同法の規制を受けることとなった。

2.譲渡担保においては,売主は,買主に目的物を譲渡するが,当該目的物の所有権は代金完済までは買主に移転しない旨の特約を結ぶことにより間接的に任意の弁済を促すとともに,代金が支払われないときは売主が契約を解除し,所有権に基づいて目的物を取り戻すことで債権の回収を担保するという形式がとられる。

3.譲渡担保の目的物については,譲渡性のある財産であれば,その性質は問わないため,構成部分が変動する集合動産は,その種類・所在場所・量的範囲等により目的物の範囲が特定される場合には譲渡担保の目的物となるが,将来の債権は譲渡担保の目的物とはならない。

4.譲渡担保権者は,債務者の履行遅滞により目的物の処分権を取得するため,債務者は,債権者が担保権の実行を完了する前であっても,履行遅滞後に残債務を弁済して目的物を受け戻すことはできなくなる。

5.譲渡担保権が実行された場合において,譲渡担保の目的物の価額から被担保債権額を差し引き,なお残額があるときは,譲渡担保権者は当該残額について清算する義務を有し,清算金の支払と目的物の引渡しは,特段の事情のある場合を除き,同時履行の関係に立つ。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが
譲渡担保とは、債権者が債務者に対して有する債権を担保するために、物の所有者又は権利者が、所有権又は権利を債権者に移転することです。法定されていない非典型担保の一種です。前半部分は妥当です。後半部分ですが、法律は制定されていません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
譲渡担保の特徴は、質権と異なり、担保設定者が目的物の占有を移さなくてよい、という点です。「売主は買主に目的物を譲渡する」わけではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
集合動産も将来の債権も、譲渡担保の目的物とすることができます。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
履行遅滞により処分権を取得する、という点は妥当です。担保権の実行完了前に残債務を弁済したのであれば、受戻しを受けることができます。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。

以上より、正解は 5 です。

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