公務員試験 H29年 国家一般職(行政) No.23解説

 問 題     

不動産の物権変動に関するア〜オの記述のうち,判例に照らし,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

ア.AがBの強迫によりA所有の不動産をBに売却した後,Bが当該不動産を更に善意のCへ売却した場合において,Aが強迫を理由としてAB間の売買を取り消したのがBC間の売買の前であったときは,AはCに対し登記なくして自己の権利を対抗することができ,AB間の売買を取り消したのがBC間の売買の後であったときも,同様である。

イ.Aが,Bに自己の所有する不動産を売却したところ,Bが代金を支払わないため売買契約を解除した場合において,AB間の契約解除前にBがCに当該不動産を売却していたときには,CはAに対し登記なくして自己の権利を対抗することができないが,AB間の契約解除後にBがCに当該不動産を売却していたときには,CはAに対し登記なくして自己の権利を対抗することができる。

ウ.Aが死亡し,その相続人であるBが,共同相続人であるCに無断で相続財産である不動産について自己名義の単独登記をし,Dに当該不動産を売却した場合,CはDに対し登記なくして自己の共有持分を対抗することができない。

エ.Aが死亡し,その相続人であるBが,共同相続人であるCとの遺産分割協議の結果,その相続財産である不動産を単独で相続した後に,Cが当該不動産に係る遺産分割前の自己の共有持分をDに譲渡した場合,BはDに対し登記なくして遺産分割による法定相続分を超える権利取得を対抗することができない。

オ.AがBに自己の所有する不動産を売却し,その後当該不動産についてCの取得時効が完成した場合には,CはBに対し登記なくして自己の権利取得を対抗することができるが,Cの時効完成後にAがBに当該不動産を売却した場合には,CはBに対し登記なくして自己の権利取得を対抗することができない。

1.ア,イ
2.ア,ウ
3.イ,オ
4.ウ,エ
5.エ,オ

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

記述 ア ですが
強迫による不動産の物権変動について、B C 間の第二取引が、始めの取引の取消前に行われたのであれば、強迫された A 保護の観点から、C が善意であっても A は登記なく自己の権利を対抗できます。一方、BC 間の第二取引が取消後の場合、強迫による始めの取引が取消されたタイミングで、A は登記をできる立場にあります。従って、AC 間について、先に登記を備えたものが権利取得を対抗できる、とされています。「同様」ではありません。記述 ア は誤りです。

記述 イ ですが
A→B、B → C 間と取引が行われた際、AB 間の契約解除に伴う不動産の物権変動に関する対抗問題については、解除前後のどちらに第二取引が行われても、登記の先後で対抗できるかが決まります。「CはAに対し登記なくして自己の権利を対抗することができる。」ということはありません。記述 イ は誤りです。

記述 ウ ですが
B は C の持分について無権利者です。そのため、C の持ち分について、B → D で勝手に取引があっても 、登記なく、C は自己の持分を対抗できます。記述 ウ は誤りです。

記述 エ は妥当です。
法定相続分を超える部分は新たな物権変動とみることができ、また、登記の具備も容易であるため、登記なく権利取得が対抗できない、という趣旨です。

記述 オ は妥当です。
時効完成後は登記を備えることができるという事情を考慮して結論が左右されます。

以上より、正解は 5 です。
類題 H26no23 

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