公務員試験 H29年 国家一般職(行政) No.22解説

 問 題     

代理に関するア〜オの記述のうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし,争いのあるものは判例の見解による。

ア.復代理とは,代理人が自らの責任で新たな代理人(復代理人)を選任して本人を代理させることをいい,復代理人の選任は,法定代理では常に行うことができるが,任意代理では本人の許諾を得た場合又はやむを得ない事由がある場合にのみ行うことができる。

イ.自己契約及び双方代理は原則として禁止されているが,本人があらかじめ許諾している行為や債務の履行については例外とされており,例えば,登記申請行為における登記権利者と登記義務者の双方を代理することは,債務の履行に当たり,許される。

ウ.契約の締結時に相手方から代理人に対し詐欺があった場合,代理人の意思表示に瑕疵があったかどうかは,本人ではなく,代理人を基準として判断することになるため,本人の事情について考慮されることはない。

エ.無権代理人である子が本人である親を単独相続した場合においては,本人が死亡前に無権代理行為の追認拒絶をしていたときであっても,無権代理人が本人の追認拒絶の効果を主張することは信義則に反し許されないため,無権代理行為は当然に有効となる。

オ.代理権踰越の表見代理が認められるためには,代理人が本人から何らかの代理権(基本代理権)を与えられている必要があるが,基本代理権は,私法上の行為についての代理権であることが必要であり,公法上の行為についての代理権がこれに含まれることはない。

1.ア,イ
2.ア,エ
3.イ,オ
4.ウ,エ
5.ウ,オ

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

記述 ア は妥当です。
復代理とは、代理人が選んだ人が、本人を代理することです。法定代理人は、自己の責任で復代理人を選定できます。一方、任意代理人は、本人許諾 or やむを得ない理由が必要です。

記述 イ は妥当です。
改正民法 108 条において、双方代理 及び 代理人と本人の利益相反行為は、原則無権代理とみなされます。例外として、債務履行、本人許諾の場合があげられています。

記述 ウ ですが
「代理人に対し詐欺があった場合、本人でなく代理人を基準として判断」することは妥当です。ただし、改正民法 101 条 3 項により、「特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたとき」は例外的に本人の事情を考慮されることがありえます。記述 ウ は誤りです。

記述 エ ですが
最判 H10.7.17 によれば、追認拒絶の後は本人でも追認により無権代理行為を有効とできず、後の相続で何ら影響を与えないのだから、無権代理が「当然に有効となる」わけではない、と判示されています。記述 エ は誤りです。

記述 オ ですが
民法 110 条に「権限外」とあるため、通説、判例によれば、本人が「何らかの代理権」=「基本代理権」を与えていた事が、「代理権踰越の表見代理が認められる」要件となります。

公法上の行為について、代理権の付与は、原則基本代理権に該当しませんが、私法上の取引行為の一環としてされるとき、基本代理権になりえます。(最判 S46.6.3)。従って、「公法上の行為についての代理権が、基本代理権に含まれることはない」わけではありません。従って、記述 オ は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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