公務員試験 H28年 国家専門職(食品衛生監視員) No.4毒性学Ⅰ(2)解説

 問 題     

化学物質に関する記述 ①~⑤ について、妥当なものには ○ を、妥当でないものには × をそれぞれ記せ。

① カドミウムは、δ ーアミノレブリン酸脱水酵素の阻害などを通じてヘムの生合成を低下させることにより、貧血を引き起こす。

② ダイオキシン類は、生体内に取り込まれると脂肪組織などに蓄積し、芳香族炭化水素受容体(aryl hydrocarbon receptor;AhR)を介して遺伝子に作用し、催奇形性、発がん性、免疫抑制などを引き起こすと考えられている。

③ 有機リン系農薬であるパラチオンは、アセチルコリンエステラーゼの活性を阻害することにより、内因性アセチルコリンを神経終末に蓄積させる。神経終末に蓄積したアセチルコリンは、ムスカリン様症状、ニコチン様症状、中枢神経症状を引き起こす。

④ トランス脂肪酸は、その過剰摂取により、心筋梗塞などの冠動脈疾患が増加することが報告されているが、平均的な日本人の摂取量においては、疾患リスクとの関連は明らかでない。

⑤ アクリルアミドは、ジャガイモや穀類などを高温(120 ℃ 以上)で加熱調理した場合に生成すると考えられているが、CYP2E1 により酸化されて、発がん性を失う。

 

 

 

 

 

 解 説     

①ですが
記述は鉛貧血についての記述と考えられます。Cd は過剰症として腎障害が知られています。
ちなみに、記述の「δ-アミノレブリン酸」は、ポルフィリン合成経路の最初の生成物です。鉛による造血障害時に、尿中のδーアミノレブリン酸値が上昇します。

②~④は、妥当な記述です。

⑤ですが
記述の前半は妥当です。しかし、アクリルアミドは CYP2E1 によって、代謝活性化を受ける物質です。酸化されて「発がん性を失う」は、明らかに誤りと考えられます。

以上より、①☓、②◯、③◯、④◯、⑤☓ です。

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