公務員試験 H28年 国家専門職(教養) No.37解説

 問 題     

近代における西洋の思想家に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.カントは,善意志をもつ人格が,互いの人間性を尊重し合う,理想的な道徳的共同体を「目的の国」と呼び,徳と幸福とが調和した最高善の状態と考えた。さらに,この理想的な社会を世界的な規模にまで拡大し,永遠(永久)平和のための世界連邦を実現すべきであると主張した。

2.キルケゴールは,「満足した豚であるよりは不満足な人間である方がよく,満足した愚か者であるよりは不満足なソクラテスである方がよい」として,人間の幸福にとっては精神的快楽が重要だと考えた。そして,人間の精神的側面を強調した質的功利主義を主張した。

3.ヘーゲルは,人間は誰でも自由と平等を志向する共通の意志をもっており,これを体現するものが一般意志であると考えた。人々は一般意志に従って自らの自由と権利を国家に委ねるのであり,国家は人々と市民社会を統合した人倫の最高の形態であると主張した。

4.J.S.ミルは,現実の社会の変化や歴史の動きには必然性があるというベンサムの思想を引き継ぎ,いかなる理想も,その必然性に沿ったものでなければ実現されないと考えた。そして,この歴史を根本で支配しているものが,自由を本質とする理性的な精神である絶対精神であると主張した。

5.ルソーは,人間は不安や絶望を通して初めて真実の自己,すなわち実存に達すると考えた。そして,人間は神の前に単独者としてただ一人立ち,神に自己を委ねることにより,本来の自己を獲得し,宗教的実存に至ると主張した。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

選択肢 1 は、妥当な記述です。

選択肢 2 ですが、質的功利主義を主張したのは、ミルです。キルケゴールではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが、一般意志を提唱したのは ルソー です。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが、絶対精神は、ヘーゲル哲学の最高の原理です。ミルではありません。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが、不安や絶望を通して実存に達する と考えたのは、キルケゴールです。ルソーではありません。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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