公務員試験 H28年 国家一般職(教養) No.35解説

 問 題     

16 世紀から17 世紀にかけてのヨーロッパに関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.イギリスでは,国王の権威を重んじるトーリ党と,議会の権利を主張するホイッグ党が生まれた。国王ジェームズ2 世がカトリックの復活を図り,専制政治を強めると,両党は協力して,王女メアリとその夫のオランダ総督ウィレムを招いて王位に就けようとした。

2.フランスでは,ルイ14 世が即位し,リシュリューが宰相となって国王の権力の強化に努めたが,それに不満を持った貴族がフロンドの乱を起こした。国内の混乱は長期化し,ルイ14 世が親政を始める頃にはフランスの王権は形骸化していた。

3.神聖ローマ帝国内に大小の領邦が分立していたドイツでは,ハプスブルク家がオーストリア領ベーメン(ボヘミア)のカトリック教徒を弾圧し,それをきっかけに百年戦争が起こった。その後,ウェストファリア条約によって戦争は終結した。

4.スペインは,フェリペ2 世の下で全盛期を迎えていたが,支配下にあったオランダが独立を宣言した。イギリスがオランダの独立を支援したため,スペインは無敵艦隊(アルマダ)を送り,イギリス艦隊を撃滅し,オランダ全土を再び支配下に置いた。

5.ロシアは,ステンカ = ラージンによる農民反乱が鎮圧された後に即位したイヴァン4 世(雷帝)の下で,軍備の拡大を背景にシベリア経営を進め,中国の清朝とネルチンスク条約を結び,清朝から九竜半島を租借した。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

選択肢 1 は、妥当な記述です。

選択肢 2 ですが、フランスにおける最後の貴族の反乱がフロンドの乱です。その後、貴族勢力が打破され、絶対王政体制の確立とつながります。王権の形骸化は明らかに誤りです。

選択肢 3 ですが、ウェストファリア条約で終わるのは、「三十年戦争」です。三十年戦争は、ヨーロッパ中を巻き込んだ、カトリックとプロテスタントによる、最後にして最大の宗教戦争です。

きっかけは宗教対立、その後「フランス王国ブルボン家+ネーデルラント連邦共和国」VS「スペイン・オーストリア両ハプスブルク家」による、国際的覇権争いです。

※この最中、国際法の父、グロディウスが『戦争と平和の法』を著したりしてます。そりゃなんかルール欲しい世相だと思います。

選択肢 4 ですが、1588 年、無敵艦隊アルマダが破れます。この後、スペインは大西洋制海権を失っていく流れです。また、オランダ独立が決定的になり、1609 年スペインが承認です。国際的には、選択肢 3 のウェストファリア条約で承認されます。

選択肢 5 ですが、1689 年のネルチンスク条約は、ロシアのピョートル 1世と、清の康煕帝の間で結ばれた条約です。よって、明らかに誤りです。ちなみに雷帝は、モスクワ・ロシアの初代ツァーリ(皇帝)です。

以上より、正解は 1 です。

コメント