公務員試験 H28年 法務省専門職員 No.56解説

 問 題     

K.マルクスの理論に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.彼は,行為者の行為を金銭的価値に置き換えた上で,行為者間の相互作用を金銭的価値の交換として捉え,この金銭的価値の交換に焦点を当てて,社会関係や社会構造を説明する交換理論をH.S.ベッカーと共に示した。

2.彼は,ある者が,他者の逸脱行為の功利的な利得・コスト計算をし,逸脱行為をした方が利得等が大きいなどと判断した結果,他者の逸脱行為を模倣するという模倣論をÉ.デュルケムと共に示した。

3.彼は,職業に付与される威信を測定して点数化したものである職業威信スコアを測定するため,社会階層と社会移動に関する調査であるSSM 調査を実施し,世界における職業威信スコアを示した。

4.彼は,史的唯物論を示し,生産諸力の一定の発展段階に対応する生産諸関係は,人間の意志から独立しており,その生産諸関係の全体が社会の経済機構を作り,それが土台となり,その上に法律的,政治的上部構造があり,社会の意識諸形態もその土台に対応するなどとした。

5.彼は,D.ベルらと共にイデオロギーの終焉を主張し,脱工業化社会や情報化社会では,政策的優先順位をめぐる対立は消滅し,宗教的対立のみが問題になるなどとした。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

選択肢 1 ですが
H.S.ベッカーらが提唱したのは、ラベリング論です。(参照 H27no57)。「交換理論」を示したのは、ホマンズ、ブラウです。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
マルクスが述べたのは「史的唯物論」です。逸脱行為の模倣論ではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
SSM 調査は、1950年代初頭、社会構造を国際的に比較研究するねらいで国際共同研究事業となった調査です。社会階層構造(不平等の構造)と社会移動(社会的地位の変化)について、無作為抽出を伴う全国規模の社会調査によって調べることを目的とした調査です。マルクスの理論ではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。

選択肢 5 ですが
「イデオロギーの終焉」とは、「豊かな社会」の到来とともに、階級闘争を通じた社会の全面的変革 という理念が効力を失ったとする論のことです。主張したのは、ベルやリプセットです。マルクスではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4 です。

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