公務員試験 H28年 法務省専門職員 No.29解説

 問 題     

次は,ある事例に関する記述であるが, □ に当てはまるものとして最も妥当なのはどれか。

母親との関係について悩んでいた中学3 年生のA子。A子は,帰宅が午後6 時を過ぎると母親から「遅い!もっと早く帰ってきなさい!」と厳しく言われることが多く,それ以外にもA子は母親から「勉強しなさい!」などともよく言われていた。A子は母親からいつも叱られたり,注意されたりしていたので,「お母さんは私のことが嫌いなんだ。」と思っていた。

ある日,A子はスクールカウンセラーから,□ を教えてもらったことで,「遅い!」という母親の怒りの感情表現の裏側には「心配している」という気持ちがあることに気付き,以下のに示すように「事実,気持ち,提案,選択」の4 段階に分けて自分の思いを母親に伝え,母親と話し合った。その後もA子は,何かあると母親と話し合うようになり,以前より母親との関係が良くなった。

<A子が母親に伝える内容>
事 実:「お母さんは,私の帰宅が6 時を過ぎると,大きな声で『遅い!』と言うね。」

気持ち :「お母さんが私のことを心配してくれる気持ちはうれしいよ。でも,大きな声で言われると,私にはとてもきつく感じて,お母さんに嫌われているようで,悲しくなるよ。」

提 案:「だから,大きな声で言わないでほしいんだ。」

選 択 :提案に対し,母親が同意した場合「ありがとう,私も遅くならないように気を付けるね。」:提案に対し,母親が同意しなかった場合「お母さん,私も遅れるときは必ず連絡するから,安心していてね。」

1.アサーション・トレーニング
2.アンガー・マネジメント
3.交流分析
4.TEACCH プログラム
5.ブリーフ・セラピー

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

母親から注意されて、嫌われていると思っている娘が、母親の注意表現の裏側にある気持ちに気づき自分の思いを伝えて話し合えるようになったという事例です。

選択肢 1 は妥当です。
アサーション・トレーニングは、自分も相手も尊重して自己表現をするというコミュニケーションスキルのトレーニングです。

選択肢 2 ですが
アンガーマネジメントは、怒りの制御法です。事例には当てはまらないと考えられます。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
交流分析は、互いに反応しあっている人々の間で行われている交流を分析することです。具体的には、「構造分析」「交流パターン分析」「ゲーム分析」「脚本分析」からなる分析です。表現の裏側にある気持ちに気づいた という点からはありえる選択肢です。しかし、裏側にある気持ちに気づいた上に、自分の思いを「事実、気持ち、提案、選択」の4段階に分けて伝えることができるようになっている今回の事例とは対応しないと考えられます。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
TEACCH とは 「Treatment and Education of Autistic and related Communication handicapped Children」 の頭文字から作られた略語です。自閉症スペクトラムを有する人やその周囲に対する包括的援助プログラムです。事例には当てはまりません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
ブリーフ・セラピーは、短期間で、効率的に、効果的に行うセラピーのことです。特徴としては、原因探しをせず、例外(問題の中ですでに解決している部分)を探す、これまでとは何か違う事をする、うまくいっていることを続ける といった点があげられます。事例には当てはまらないと考えられます。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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