公務員試験 H28年 法務省専門職員 No.26解説

 問 題     

子どもから大人への移行期である青年期に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.マーラー(Mahler, M.S.)は,青年期においては,一般に親との葛藤や親への反抗を通じ,分離-個体化過程を経て自己の個体性や自己概念が確立されるが,葛藤や反抗が生じない場合もあり,その場合,分離-個体化過程は早期に完了するとした。

2.ハヴィガースト(Havighurst, R.J.)は,人には人生のそれぞれの時期に達成されるべき発達課題があるとし,青年期における発達課題として,行動を導く価値観・倫理体系の形成や,職業の選択とそれへの準備などを挙げた。

3.ヒギンズ(Higgins, E.T.)は,自己イメージを四つに分類し,それぞれの相互関係やずれについて検証し,特に青年期は,現実自己と理想自己のずれが生じやすく,自尊感情が低下しやすいとして,自尊感情を測定する尺度を作成した。

4.青年期には,知的機能に大きな発達がみられる。ピアジェ(Piaget, J.)は,青年期を形式的操作期と呼び,この時期に初めて論理的思考が可能となり,保存の概念が獲得され,徐々に演繹的思考や帰納的思考ができるようになるとした。

5.青年期に発症しやすい精神障害の一つに双極性障害があり,新しい生活環境や対人関係によるストレスが原因の一つとされている。主な症状として,幻聴や妄想などの陽性症状と,思考の貧困や意欲・生産性の極端な低下などの陰性症状がみられる。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

選択肢 1 ですが
マーラーは「分離・個体化理論」を提唱しました。これは、フロイトの心理性的発達論の口唇期から肛門期にかけての自我の発達の理論です。つまり 0 ~ 3 歳ぐらいの理論です。青年期の話題ではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当です。
ハヴィガーストの6つの発達課題における青年期の課題についての記述です。

選択肢 3 ですが
ヒギンズはセルフディスクレパンシー理論(自己不一致理論)を提唱しました。自尊感情を測定する尺度としては、ローゼンバーグ自尊心尺度などがよく用いられています。「自己イメージを4つに分類」「尺度を作成」といった部分に注目すると誤りと考えられます。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
ピアジェ「形式的操作期」は 11 歳ぐらいからです。「初めて論理的思考が可能になる」とされるのは「具体的操作期(7~11歳)」です。また、「青年期」に「初めて論理的思考が可能になる」というのはおかしいと判断できるのではないでしょうか。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
陽性症状と陰性症状が主な症状であるのは「統合失調症」です。双極性障害は、躁状態とうつ状態が繰り返し現れる障害です。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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