公務員試験 H28年 法務省専門職員 No.22解説

 問 題     

攻撃行動に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.ミルグラム(Milgram, S.)は,実験参加者をランダムに囚人と看守に振り分けてその行動を観察するという実験を行い,人は誰でも,特別な地位や権威を与えられると,そうでない場合に比べて攻撃行動を取りやすくなることを実証した。

2.ローゼンツァイク(Rosenzweig, S.)は,攻撃性と欲求不満との関連を検討し,欲求不満耐性が低い人ほど攻撃性が高く,また,欲求不満耐性の高低は状況や環境に左右されるものではないことを見いだした。そして,攻撃性の高さは生得的なものであると主張した。

3.ダラード(Dollard, J.)らは,攻撃行動は,欲求不満を低減又は終結させようという動因に基づいて行われるが,欲求不満が常に攻撃行動に至るわけではなく,欲求不満状態に加えて自己の安全性と匿名性が確保されていることが必要条件であると主張した。

4.バーコウィッツ(Berkowitz, L.)らは,攻撃の開始や促進を決定付ける要因として,欲求不満によってもたらされる怒りなどの情動だけでなく,武器など攻撃を誘発する手掛かりの存在も重要であることを提唱した。

5.バンデューラ(Bandura, A.)は,攻撃行動のモデリングについて研究を行い,観察の対象であるモデルを強化するだけではモデリングは生じないが,モデルの観察中に被観察者に直接強化を与えることでモデリングが生じることを実証した。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

選択肢 1 ですが
ミルグラムのアイヒマン実験は、「生徒」、「教師」、「監督者(権威者)」の3つの役割で構成された実験でした。囚人と看守ではありません。ちなみに、囚人と看守の実験は、ジンバルドーによるスタンフォード監獄実験です。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
ローゼンツァイクは、PーF スタディを作った人です。PーF スタディは、欲求不満場面を見て、空白の吹き出しの発言を連想するテストです。反応傾向を他責、自責、無責というアグレッションの「方向」と、障害優位、自我防衛、要求固執の「型」から分類し、解釈します。「欲求不満耐性が低いほど攻撃性が高く・・・攻撃性の高さは生得的」という記述と符号しないテストなので、誤りと判断できるのではないでしょうか。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
ダラードは、攻撃性の本質として「欲求不満説」を論じ、「欲求不満が常に何らかの攻撃行動をもたらす」と考えました。「常に攻撃行動に至るわけではなく・・・」というわけではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当な記述です。
ダラードと同様に、バーコウィッツは攻撃性の本質を「欲求不満」と考えました。そしてきっかけにより初めて攻撃行動が加わると論じました。

選択肢 5 ですが
バンデューラは、学習が「他者の行動を観察する」ことでも成り立つことを示し、社会学習理論を提唱しました。モデルを強化する(観察対象が、ある行動をした時に、報酬を受けるのを見る)だけで、その行動を学習するのを「代理強化」といいます。「観察の対象であるモデルを強化するだけではモデリングは生じない」わけではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4 です。

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