公務員試験 H28年 法務省専門職員 No.21解説

 問 題     

次は,推論に関する記述であるが,A〜Dに当てはまるものの組合せとして最も妥当なのはどれか。

推論とは,ある前提から帰結を導き出すことであり,大きくA 推論とB 推論に分類される。このうち, A 推論では,例えば「カラスaは黒い,カラスbは黒い,カラスcは黒い」という前提から,「カラスは全て黒い」という結論を導く推論が代表的なものである。A推論では,形式上は個別命題から一般命題が導かれ,その帰結に求められるのはC である。

A 推論は,①事例の観察,②事例に基づいた一般化と仮説の生成,③観察事例に基づいた仮説検証といった3 段階に分けることができる。仮説検証の仕方を調べる課題として,ウェイソン(Wason, P.C.)の「2ー4ー6 課題」が有名である。まず,実験者は「2ー4ー6」があるルールに合致した三つ組であると実験参加者に告げる。実験参加者の課題は,あらかじめ決めてある(実験者だけが知っている)ルールを当てること,つまり,「2ー4ー6」の数字系列がどのような法則で構成されて
いるのかを答えることである。

実験参加者は仮説をテストするため,自分で新しい三つ組を考え出し,その理由も書き留める。実験者は,実験参加者が作った三つ組がルールに適合するか否か,フィードバックを与える。実験参加者はルールを見抜けたと確信したとき,実験者に告げるように求められる。実験参加者の仮説が正しければ実験は終了であり,誤答であれば同様のやり取りを続ける。

多くの場合,実験参加者は,まず「二つずつ増える偶数」という仮説を立て,それが誤りであると言われると,「二つずつ増える数」であろうと考える。それも誤りだと告げられると,仮説に反するような三つ組で試す実験参加者が出てくる。正解は「単に増加する数列」である。しかし,課題を解けない実験参加者に,仮説に反する例を挙げて検証することをヒントとして与えても,成績は余り改善されない。このように,人が仮説を検証する際に,仮説に反する証拠を探そうとはせず,仮説を支持する証拠だけを探す傾向を, D と呼ぶ。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

A,B ですが
推論は、大きく演繹と帰納に分類されます。演繹的推論は「ルール」から、具体的結論を導きます。逆に帰納的推論は、個別の事例からルールを推測します。「カラス a も b も c も黒い」という「個別の事例」から結論を推測しているので、A は「帰納」です。B は「演繹」です。

C ですが
帰結に求められるのは「確からしさ」すなわち「蓋然性」となります。あくまでも帰納的推論は、個別の結果からの推測なので、論理的必然性が求められるわけではないと判断できるのではないでしょうか。

D ですが
「仮説を支持する証拠だけを探す傾向」を「確証バイアス」といいます。「自分が確信していることに反する事例や主張を無視したり、あら探しをしてしまう傾向」が「信念バイアス」です。

以上より、正解は 5 です。

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