問 題
DSMー5(精神疾患の診断・統計マニュアル)による物質関連障害に関する記述として最も妥当なのはどれか。
1.アルコール中毒の症状は,ろれつの回らない会話,協調運動障害,不安定歩行,眼振などである。習慣的なアルコール中毒の発症が早いほど,アルコール使用障害に進展する可能性が高くなる。また,アルコール中毒は自殺行動の重要な寄与因子である。
2.大麻中毒の症状は,落ち着きのなさ,神経過敏,興奮,不眠,顔面紅潮などである。大麻を喫煙により体内に取り込むと数分以内に症状が表れ,効果は通常1 日程度持続する。年齢が若いほど低用量でも症状が悪化しやすく,特に睡眠の障害や過覚醒の感覚の訴えをより強く示すようになる。
3.鎮静薬,睡眠薬又は抗不安薬中毒の症状は,めまい,反射の低下,全身の筋力低下,多幸症などである。一般に,青年期から使用を開始し,使用量を増やしていった結果,重度の身体機能障害が起こる場合が多い。ただし,認知障害や外傷性脳損傷を有する者の場合,これらの物質による影響を受けにくい。
4.精神刺激薬中毒の症状は,アンフェタミンやコカインの注射や吸入により,数十分後に,通常は気分の高揚から始まり,多幸症,不快気分,精神運動興奮,判断力の低下,眠気などとして表れる。同中毒の治療中における再使用のリスク要因として,素行障害と反社会性パーソナリティ障害が挙げられている。
5.タバコ使用障害の症状は,神経系統の興奮又は麻痺,血管の収縮などであり,中長期的には肺やその他の癌,心疾患や呼吸器疾患,息切れなどの深刻な問題を引き起こす。外向的な性格傾向の人に比べ,内向的な性格傾向の人はタバコを使用する割合や頻度が高く,使用期間も長くなりやすい。
解 説
選択肢 1 は妥当です。
アルコール中毒、アルコール使用障害についてです。
選択肢 2 ですが
代表的症状は「心拍数増加、目の充血、食欲増進」などです。喫煙により数分程度で症状が表れますが、持続時間は数時間程度です。「効果は通常 1 日程度持続する」わけではありません。選択肢 2 は誤りと考えられます。
選択肢 3 ですが
鎮静薬、睡眠薬、抗不安役中毒の症状は「ろれつが回らない、不安定歩行、判断力の低下」などです。「全身の筋力低下」、「多幸症」といった記述に違和感を覚えるのではないでしょうか。また、認知障害や外傷性脳損傷を有するから影響を受けにくいということはないと考えられます。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
精神刺激薬中毒の症状は、使用後すぐに表れることが特徴です。「数十分後」ではありません。再使用のリスク要因としては、双極性障害、統合失調症、反社会性パーソナリティ障害、他の物質使用障害があげられています。「素行障害」はあげられていません。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
前半は妥当な記述です。後半ですが「外向的」と「内向的」が逆です。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 1 です。
コメント