公務員試験 H28年 法務省専門職員 No.6解説

 問 題     

不安に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.精神分析的立場では,不安を二種類に大別しており,そのうち,脅威となる外的な事象によって予想される危害や苦痛への反応は神経症的不安と呼ばれている。神経症的不安は,不安を引き起こす原因である外的事象を特定しやすいため,自力でその状況を回避・低減し,心理的安定を取り戻すための行動を取りやすいとされている。

2.行動理論的立場から,マウラー(Mowrer, O.H.)やミラー(Miller, N.E.)は,不安や恐怖を苦痛に条件付けられた反応とみなし,特定の場面で苦痛を経験すると,その場面に含まれていた各種の刺激は,その後,実際の苦痛によって引き起こされたものと同様の情動や回避反応を引き起こすようになると考えた。このような反応は,条件性情動反応と呼ばれている。

3.認知論的立場から,ラザラス(Lazarus, R.S.)は,事態を脅威的だと認知することにより生じる認知媒介型の情動として不安を位置付け,認知的評価は段階的に行われると考えた。例えば,一次的評価で事態を脅威的と評価しても,二次的評価において,自分では脅威に対処する効果的な手段を有しておらず,状況をコントロールできないと評価した場合には,無力感が前面に出るため,かえって不安を感じにくい。

4.不安に対する代表的な介入法として,系統的脱感作法がある。これは,人間が一般に不安を抱くような状況を標準化してリストにした不安階層表を用い,不安の弱い場面から順次不安に対する拮抗反応を生起させることで不安を制し,最終的には最も強い不安場面においても不安を感じることのないよう馴化させていく方法である。

5.不安を評定する方法として,状態-特性不安検査(STAI)がある。これは,スピルバーガー(Spielberger, C.D.)らが,不安を,一過性の状況反応と比較的安定した個人的傾向から測定することを目的に作成したものである。その後,テーラー(Taylor, J.)が,STAI の中から項目を選び出し,対象者の不安水準を捉える検査として顕在性不安尺度(MAS)を開発した。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

選択肢 1 ですが
フロイトによれば、不安は「現実不安」と「神経症的不安」に大別されます。実際に存在するような脅威となる外的事象(例:目の前に現れた怖そうな犬)により予想される危害や苦痛への反応は「現実不安」です。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当です。

選択肢 3 ですが
ラザラスは認知論的立場からストレス理論を提唱しました。その中で二次的評価において、状況をコントロールできないと評価した場合には、ストレス反応が強まるとしました。そもそも「不安」と「ストレス」の違いがある上に、「無力感が前面に出るため、かえって・・・感じにくい」という記述は妥当ではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
系統的脱感作法とは、リラックスした状態で「クライアントが不安を感じるもの」を、不安の弱い場面から思い出す→リラックスする という流れを繰り返すことにより不安を取り除く方法です。拮抗反応というのが、リラックスする ということです。「人間が一般に不安を抱くような状況」を思い出すわけではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
スピルバーガーの STAI についての記述は妥当です。テーラーの MAS ですが「STAI から項目を選び出し」たわけではありません。MAS は、MMPI という人格目録検査から項目を選びだした検査法です。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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