公務員試験 H28年 国家一般職(行政) No.51解説

 問 題     

国際関係の理論に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.覇権国というべき最強国が国際社会の安定に責任を持って行動することによって初めて国際秩序は維持されるという覇権安定論の考え方がある。この考え方によれば,米国は 19 世紀に覇権を握り,20 世紀の二度の世界大戦の収拾に覇権国として指導力を発揮したということになる。

2.複数の対立する諸国家間の国力が同程度である場合には,力の均衡状態が生まれるという考え方を勢力均衡論という。この考え方においては,二つの大国の間で第三の国がバランサーとして重要な役割を果たすこともあり,更に国力が小さい諸国は,何十カ国も集まって,まとまったグループとして一つの力の極を形成して対抗することになるとされる。

3.複数の国々の間で経済的な交流が深まり,貿易関係の増大などを通じて相互に依存しあう関係が深まると,戦争の危険は低下すると考えられる。こうした考え方は「民主的平和論」と呼ばれ,民主主義国家同士では戦争が起こらないという議論を生み出している。

4.敵対する相手国と同じ程度の攻撃力を自国も持つことによって,相手の行動を抑止することができるとし,恐怖の均衡とも呼ばれた抑止論の考え方は冷戦中に発展し,核兵器による相互確証破壊という考え方も生まれた。こうした考え方に立って,冷戦中は対立する核保有国間での軍拡競争が防がれた。

5.侵略行為などの国際秩序を乱す国が現れたときには,その他の諸国が共同で対抗措置を採れる仕組みを作っておくことによって,秩序を乱す国の行動を抑制することができるとする考え方を集団安全保障という。対抗措置には武力行使を含む強制的な手段が含まれる。この考え方は,20 世紀以降に国際社会の安全保障制度の原則となった。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが
18 ~ 19 C の覇権国は英国です。米国は 20C の覇権国です。ちなみに、17C はオランダです。「米国は 19 C に覇権を握り」という記述は妥当ではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
勢力均衡論では、2つの大国の間にある第 3 の国や、国力が小さい国は、それぞれがどちらかの大国と同盟を結ぶと考えられます。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
「民主的平和論」とは、民主国家同士は戦争を避ける傾向にある、という理論です。前半の記述は相互依存論についてです。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
抑止論の考え方に基づくと、確実に相手が行動しないように抑止するには、十分な抑止力が必要です。その結果、軍備力強化の方向に進みます。「安全保障のジレンマ」と呼ばれます。「こうした考え方に立って…軍拡競争が防がれた」わけではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
集団安全保障についての記述です。

以上より、正解は 5 です。

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