問 題
技術経営に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。
1.製品開発を構成する一連の活動について,コンカレント・エンジニアリングと呼ばれる開発方法の下では,各担当部門が緊密に連携しながら同時並行的に開発を行うことができ,部門横断的な問題を前倒しして解決することを可能とするため,シーケンシャル・プロセスと呼ばれる従来の開発方法と比較して,開発リードタイムの短縮や製品の総合品質の向上などの点において優れている。
2.製品ライフサイクルの段階ごとに適合的な生産工程の種類を図式的に示すものが,製品・工程マトリックスである。需要量が大きい導入期には,一品生産や多品種少量生産が適合し,ニーズが収斂し需要量が減少してくる成長期には,少品種大量生産が適合的になるが,ドミナント・デザインが登場した後の成熟期には,一品種大量生産が適合的になる。
3.ドミナント・デザインの創出に成功した企業は,その製品に最適な生産工程を作り上げるために,工程イノベーションを多数生み出すようになる。やがて工程イノベーションの発生率は低下する一方で生産性は向上するが,製品設計の変化に対する生産のフレキシビリティが低下するため,次の製品イノベーションの機会を失ってしまう。こうした状況はイノベーターのジレンマと呼ばれる。
4.20 世紀初頭のフォード社の工場では,時間研究などの手法を通じて科学的管理法が開発され,それに基づき,フォード・システムが完成した。ゼネラル・モーターズ社は,フォード・システムを基本としつつも,移動組立ラインを考案し,更に専用工作機械の精度向上による互換性部品を初めて生産し,これにより多様化するニーズに対応可能なフレキシブル大量生産システムを構築した。
5.部品間の相互依存性が高いクローズド・インテグラル型の製品では,プラットフォーム戦略が有効に機能する。一方,オープン・モジュラー型の製品では,インターフェースの設計ルールが一社内で閉じているため,プラットフォーム戦略は機能しない。
解 説
選択肢 1 は妥当です。
コンカレント・エンジニアリングについての記述です。
選択肢 2 ですが
製品工程マトリックスとは、横軸に製品タイプ、縦軸に工程タイプをとった分析手法です。一般的な枠組みとして、製品タイプの枠組みが「一品生産品、一品種大量生産、多品種少量生産・・・」、工程タイプの枠組みが「プロジェクト、バッチフロー、製品別の連続生産ライン・・・」などです。製品ライフサイクルとは、製品が市場に登場してから退場するまでの間のことです。「製品ライフサイクルの段階ごとに・・・」という記述は妥当ではありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
生産性向上により製品イノベーションが抑制される現象は「生産性のジレンマ」です。(H26no49)。イノベーターのジレンマは、イノベーションのジレンマとも呼ばれ、巨大企業が新興企業の前に力を失う理由を説明した企業経営の理論です。クレイトン・クリステンセンが提唱しました。
選択肢 4 ですが
前半部分は妥当です。20 世紀初頭の、フォード社の科学的管理法による大量生産方式であるフォード・システムについてです。後半部分ですが、移動組立ラインとは、製品が組立て作業を行う生産主体(作業者)の間を移動し、順次に部品装着、必要な加工を受け、製品に仕上げられる方法です。フォードシステムについての記述となります。「ゼネラル・モーターズ社は・・・移動組立ラインを考案」という記述は妥当ではありません。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
プラットフォームとは、土台となる環境のことです。プラットフォーム戦略は、顧客への価値提供の共通土台を、複数の企業・組織と連携して構築する戦略のことです。プラットフォームにおいてのインタフェースはオープンであることが望まれると考えられます。従って、クローズド型の製品で有効に機能するという記述は妥当ではありません。また、後半部分ですが、オープン型であれば、インタフェースは共通です。一社内で閉じているのはクローズドです。(参考 H27no47)。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 1 です。
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