公務員試験 H28年 国家一般職(行政) No.20解説

 問 題     

国家賠償に関する ア〜オ の記述のうち,判例に照らし,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

ア.宅地建物取引業法(昭和55 年法律第56 号による改正前のもの)に基づく知事等による宅地建物取引業者への免許の付与又は更新は,同法所定の免許基準に適合しない場合であっても,当該業者との個々の取引関係者に対する関係において直ちに国家賠償法第1 条第1 項にいう違法な行為に当たるものではない。

イ.国家賠償法第1 条の責任について,同条にいう職務を行った公務員個人に故意又は重大な過失があった場合は,国又は公共団体と連帯して当該公務員個人もその責任を負う。

ウ.国家賠償法第1 条が適用されるのは,公務員が主観的に権限行使の意思をもって行った職務執行につき違法に他人に損害を加えた場合に限られるものであり,客観的に職務執行の外形を備える行為であっても,自己の利を図る意図をもって行った場合は,国又は公共団体は損害賠償の責任を負わない。

エ.営造物の利用の態様及び程度が一定の限度にとどまる限りにおいてはその施設に危害を生じさせる危険性がなくても,これを超える利用によって利用者又は第三者に対して危害を生じさせる危険性がある状況にある場合には,そのような利用に供される限りにおいて,当該営造物には国家賠償法第2 条第1 項の営造物の設置又は管理の瑕疵がある。

オ.国家賠償法第3 条第1 項は公の営造物の設置管理者と費用負担者とが異なるときは双方が損害賠償の責任を負うとしているが,同項にいう費用負担者とは,当該営造物の設置費用につき法律上負担義務を負う者に限られ,当該営造物の設置費用の一部につき補助金を交付した者は含まれない。

1.ア
2.ウ
3.ア,エ
4.イ,エ
5.ウ,オ

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

記述 ア は妥当です。
「直ちに違法な行為にあたるわけではない」と、監督処分権限不行使と国家賠償に関する判例(最判 H元.11.24)で述べられています。

記述 イ ですが
通説・判例によれば、代位責任説です。本来責任を負うべき者が公務員であることは前提ですが、その責任は、国・公共団体が代位して負担することを定めたと理解する立場です。「連帯して当該公務員個人も責任を負う」わけではありません。記述 イ は誤りです。

記述 ウ ですが
通説・判例によれば、外形標準説です。職務行為を、客観的にみて外形が職務執行と認められる場合と解釈します。「自己の利を図る意図をもって行った行為」も、客観的に外形を備えれば職務行為として認められます。従って、国又は公共団体は損害賠償の責任を負うことがあります。記述 ウ は誤りです。

記述 エ は妥当です。
大阪空港公害事件の判例です。(最大判 S56.12.16)。

記述 オ ですが
国が、地方公共団体に対し、設置費用の 2 分の 1 近くを補助金交付により負担している場合において、費用負担者にあたるという判例があります。「費用負担者とは・・・補助金を交付した者は含まれない」というわけではありません。記述 オ は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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