公務員試験 H28年 国家一般職(行政) No.6解説

 問 題     

官僚制に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.M.ウェーバーは,近代官僚制と家産官僚制を区別し,近代官僚制においては君主と官吏が主従関係にあり官吏の身分が拘束されているのに対して,家産官僚制においては自由な身分の官吏が契約によって任命されていることを特徴として対比した。

2.軍隊組織は,官僚制にはない特徴を持つ組織であり,厳格な身分制と明確な階級制,上位から下位への連絡が一元化された命令系統,意思決定の集権性,外部との関わり合いが抑制される閉鎖性などを特徴とする。

3.P.セルズニックは,官僚制による分業が組織内での利害の分岐を生み,官僚制全体の目的よりも下位組織の目的を重視し内面化することで,それぞれの利害が対立し,組織内のコンフリクトが生じると指摘した。

4.真渕勝は,我が国の官僚像について,1960 年代以前の家産官僚制の性格を残す吏員型官僚,1970  年代以降の自由民主党政権の長期化と利益団体の活動の活発化による国士型官僚,1980 年代以降の政治と社会からの圧力による調整型官僚の登場を指摘した。

5.R.マートンは,官僚制組織の成員が訓練や実務を通じて組織にとって必要な行動原則を身に付けた時には,状況によって柔軟に行動原則に沿った行動が表出されるとして,官僚制の逆機能的側面を強調した。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
家産官僚制は、近代的な「合理的官僚制」に対比して用いた概念です。家長に絶対的忠誠を誓う家産的官僚による制度です。「自由な身分の官吏が契約によって任命されていることが特徴」ではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
軍隊組織は代表的官僚制度の一つです。ヒエラルキー(位階、階層)を有する点などが特徴です。「官僚制にはない特徴を持つ組織である」という記述は妥当ではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
セルズニックについての記述です。

選択肢 4 ですが
真渕勝日本の官僚像を類型化し、国士型→調整型→吏員型 という流れを提唱しました。順番が違います。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
「官僚制の逆機能」とは、本来、目標を達成するための手段であったはずの官僚制が、「官僚制を維持する」ことが目的になってしまう、ということです。例としては、「目標達成のために、規則により秩序通り仕事を捌いて無駄をなくした」はずが、「規則を守ることが目的となることで、イレギュラー業務への対応が非合理になってしまう」といった事です。(H27no7 記述 エ)。記述は逆機能についてではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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