問 題
植物の環境ストレス応答に関する記述として最も妥当なのはどれか。
1. 植物がストレスを低減させるための機構には耐性と回避の二つがある。高温ストレスを受けた植物の場合蒸散により葉温の上昇を防ぐ応答はストレス耐性機構であり熱ショックタンパク質を合成して高温でも細胞機能を維持する機構がストレス回避機構である。
2. 植物はストレスに応答して様々なタンパク質を合成する。そのうちLEA*タンパク質は冠水などによる酸欠からアルコールデヒドロゲナーゼは重金属からフィトケラチンは活性酸素から植物を守るのに役立っている。
3. 乾燥ストレスを受けた植物は浸透圧調節を行い細胞の含水量を低く保つことにより生理活性を維持しようとする。浸透圧調節のために高濃度に存在しても酵素活性に対する影響の少ないナトリウムイオンなどの適合溶質を細胞内に蓄積する。
4. 強光や大気汚染物質などによるストレスで植物細胞に活性酸素が発生する。葉緑体など活性酸素の発生しやすい部位には活性酸素消去系も存在しているが消去能を超えて過剰に活性酸素が発生した場合は細胞内の成分が酸化されることにより障害が発生する。
5. ファイトアレキシンは病原微生物の感染を受けた植物細胞が合成する感染特異的タンパク質である。ファイトアレキシンには様々な種類があり合成されるファイトアレキシンの種類は宿主植物によってではなく感染した病原微生物の種類により決まっている。
*LEA:late embryogenesis abundant
解 説
選択肢 1 ですが
「耐性」と「回避」が逆です。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
LEAは乾燥、アルコールデヒドロゲナーゼが冠水、フィトケラチンが重金属 からそれぞれ植物を守るのに役立っています。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
細胞の含水量は「高く」保ちます。また「適合溶質」は、プロリン、グリシンベタイン、マンニトール、トレハロースなどです。ナトリウムイオンではありません。よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は、妥当な記述です。
選択肢 5 ですが
ファイトアレキシンは「植物」によって決まっている物質です。「感染した病原微生物の種類」によるわけではありません。よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 4 です。
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