公務員試験 H27年 国家一般職(農学) No.31解説

 問 題     

水田土壌に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1. 酸化還元の程度を表すために酸化還元電位(Eh)が用いられる。Ehが高いほど強い還元状態にある。一般に測定はEhメータで行う。湛水下の水田土壌ではリン酸の可溶化によって還元が進み200~300mV くらいまで上昇する。

2. 水田土壌を湛水した際一般に日数が経つにつれてマンガンや鉄の還元硝酸イオンの窒素ガスへの還元(脱窒) メタンの発生分子状酸素の消失の順で還元が進行する。

3. 不良水田の一つに老朽化水田がある。老朽化水田とは作土から鉄分のほか各種塩基の溶脱が起き作期の後半に下葉の枯れ上がりが多くなる「秋落ち」現象がみられる水田をいう。対策としては含鉄資材の施用や溶脱成分を含む下層土を作土と混和する深耕などが有効である。

4. 水田では基肥のアンモニア態肥料を土壌表面の酸化層に施用するとアンモニア揮散を生じ空中に逃げていく。そのため酸化層の下の硝化菌の生息できない還元層に基肥を施用して,アンモニア揮散と窒素の有機化の進行を防止する全層施肥法が考案された。

5. 水田には多様な窒素固定微生物が生息している。田面水に生えるアカウキクサ(アゾーラ)の葉の空隙部分にはマイコライザが共生し窒素固定をしている。そのほかアンモニア酸化細菌や亜硝酸酸化細菌が多数生息しているため水田の天然窒素供給量は畑よりも高い。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが、まず、湛水下では還元状態です。これは「水がない→空気と触れてる→酸化していく」、一方「水で満たす→酸素と触れていない→酸化しにくい→還元状態」と考えると思い出しやすいのではないでしょうか。実際には嫌気性細菌による還元なども関与します。

次に知識として、「湛水(たんすい)→Eh 減少、pH↑、Fe2+↑」です。(「還元状態」というキーワードから考えれば、水素イオンに注目すると、H+ が e を「受け取る」方向に進むと考えられるから、鉄イオンも同様。Fe3+ が電子を受け取ると考えられる。)Ehの「上昇」ではありません。

よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが、まず分子状酸素が消失します。また、メタンの発生(泡がプクプク)は最後の方です。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は、妥当な記述です。

選択肢 4 ですが、酸化層に施用すると、酸化して硝酸態になります。アンモニア揮散ではありません。また、「全層」という名前からも連想できるように、作土全層に施肥するのが全層施肥法です。還元層だけに施用するわけではありません。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが、マイコライザとは菌根菌のことです。名前からもわかるように、根に共生します。「葉の空隙部分」という記述は誤りと考えられます。

以上より、正解は 3 です。

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