問 題
次は遺伝分離比の検定に関する記述であるがA~Eに当てはまるものの組合せとして最も妥当なのはどれか。
「分離の法則により表現型が3:1の分離を示すと期待されても多くの個体を調査しない限り、現実には3:1 の分離を示すことはない。調査集団はあくまでも標本としての有限な集団であるから 3:1 の期待値からの偏差すなわち標本抽出誤差がみられる。この偏差が通常出現する程度であるか、あるいは異常に大きな値であるかを統計学的に検定する。この検定にはサンプル数が少ない場合にはA が多い場合にはB が行われる。
次に遺伝分離比の χ2 検定について考える。いま花色の遺伝分析を行おうと赤花と白花を交配したところF2 世代の観察値が赤花:ピンク花:白花= 94:203:105 に分離したとする。花色がC の形質だとすると期待される分離比は1:2:1である。これについて「期待値と観察値の間に有意な差がない」という帰無仮説を立てて有意水準5% で検定する。
χ2 値は期待値と観察値のずれを表すものであり
となる。なお計算に当たっては小数第四位を四捨五入するものとする。この場合D は χ2 分布表の 5.99 (自由度2 有意水準5%) より小さいため、E 分離比は 1:2:1 とみなしてよいことになる。」
/ | A | B | C | D | E |
1. | 二項検定 | χ2 検定 | 不完全優性 | 0.642 | 帰無仮説は棄却されず |
2. | 二項検定 | χ2 検定 | 不完全優性 | 0.655 | 帰無仮説は棄却され |
3. | 二項検定 | χ2 検定 | 優性上位性 | 0.642 | 帰無仮説は棄却され |
4. | χ2 検定 | 二項検定 | 不完全優性 | 0.645 | 帰無仮説は棄却されず |
5. | χ2 検定 | 二項検定 | 優性上位性 | 0.655 | 帰無仮説は棄却されず |
解 説
χ2 検定は、ある程度のサンプル数が一般的に必要です。また、χ2 値が選択肢 D を見ればせいぜい 0.655 で、分布表の 5.99 より小さいから、帰無仮説は棄却されません。よって、正解は 1 です。
ちなみに χ2 値ですが
まず F2 世代の観察値の合計は 94+203+105 = 402 です。したがって、期待値としては 100.5,201,100.5 です。実際には、赤花 94,ピンク花 203,白花 105 なので
χ2 = (100.5-94)2/100.5 + (201-203)2/201 + (100.5-105)2/100.5
≒ 0.6417…です。
また、「優性上位性」とは、異なる遺伝子座における、同一形質に対する遺伝子の相互作用において、一方が他方に対して優性を示すこと です。豆の色について、二つの遺伝子座において「A or a」「B or b」遺伝子があるとします。この時、Aを持とうが a を持とうが、B が入ると 緑色 といった関係のことです。
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