問 題
互いに混ざり合わない、水相と有機相との間での有機酸 (HQ) の分配平衡では、水相での酸解離や有機相での二量化反応などを考慮する必要がある。図のように、酸解離及び二量化が起こっているときの有機酸の分配平衡に関する記述㋐~㋓のうち妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。
㋐ 水相の pH が十分小さく、HQ の酸解離を考慮する必要がない pH 領域では、HQ の有機相への分配比は水相のpHに無関係となる。
㋑ 水相のpHが大きくなると、水相において HQ の酸解離が進むため HQ の有機相への分配比は大きくなる。
㋒ 有機相で二量化が起こっている場合、水相の pH を一定に保ちながら HQ を加えて、水相の HQ 濃度を大きくしていくと、HQ の有機相への分配比は小さくなっていく。
㋓ 相分離を起こしている水相と有機相でも、わずかながら相互に溶解している。そのため純溶媒中における溶解度を用いて計算した分配係数と、実際の分配操作により求めた分配係数とは一致しないことが多い。
1.㋐、㋒
2.㋐、㋓
3.㋑
4.㋑、㋒
5.㋓
解 説
記述㋐は、正しい記述です。
「pH が十分に小さい」= 酸性溶液の中なので周りが H+ を与えてくる → HQは、ほぼ全てHQ。→水相の pH がそのような領域の中で多少変わろうと、HQはほぼ全てHQ → 有機相への分配比 と その領域でのpH は無関係であろう、といった流れで考えれば、妥当と判断できるのではないでしょうか。正解は 1 or 2 です。記述㋑に関しては誤りとわかります。
㋓ が、正しいと判断しやすい記述ではないかと思われます。「水/オクタノール分配比」を例に上げると、この比は「純粋な水」 と「純粋なオクタノール」への化合物の溶解度の比にはならない という話です。
なんとなくそうかも、、、と感じる記述ではないでしょうか。さらに、文末も「一致しないことが多い」とあくまでも傾向について述べており、強く断定しすぎている という点もなく妥当と考えられます。
㋒ですが
二量化がおきるのであれば、有機層 HQ が移行した後に二量化することで有機層の HQ が少なくなるので水相の HQ が有機層にさらに分配しやすいのではないかと考えられます。少なくとも、分配比が「小さく」はならないのではないかと考えて誤りと判断すればよいと思います。
以上より、妥当な記述は ㋐、㋓ です。正解は 2 です。
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