問 題
心理学における研究法等に関する記述として最も妥当なのはどれか。
1. 観察法は、人間や動物の行動を観察、記録、分析し、行動の特徴や行動の法則性を解明する方法である。自然観察、実験的観察、参与観察など様々な手法があるが、いずれも観察者から対象への働き掛けは行わないため、対象のありのままの自然の姿を捉えられることが特徴である。一方、観察者の主観が入り込みやすい。観察の信頼性や妥当性を高める方法として、ある行動が生起する持続時間を記録する時間見本法や、生起した場面を記録する場面見本法がある。
2. 質問紙調査は、調査対象者に対し、自らの属性や心理状態、行動傾向について質問紙によって回答させる方法である。一度に多数の回答を得られる点が長所であるが、用意した選択肢の中から回答を選ばせる形式であるため、想定外の回答や質的なデータが得られない点、他の研究法に比べ回答に意図的な歪曲が入り込みやすい点が短所である。したがって、質問紙の作成に当たっては、意図的な歪曲の程度を測定するための虚偽尺度を組み込む必要がある。
3. 面接法は、面接対象者に直接質問をしてデータを集める手法である。質問の内容やその順序をどの程度あらかじめ決めておくかによって、構造化面接、半構造化面接、非構造化面接、自由面接の4種類に分類される。面接においては、面接者と対象者の間に親密な関係が形成されるほど,対象者の自己開示が促され、正確で不足のないデータが得られるようになる。
4. 実験は、照明や音響を変化させて作業効率を測るなど、独立変数を操作した上で従属変数を測定することにより、変数間の因果関係について検討することを主な目的としている。実験では、無作為化により実験群と統制群を等質に設定することが基本であるが、研究の対象や内容、研究を取り巻く状況によってそれが難しい場合は、準実験の形式を選択することもある。
5. 研究は、一般に、先行研究から立てた仮説を検討する仮説検証型研究と、現実から出発して新しい知識を築き上げていく仮説生成型研究に分類することができる。前者は量的データ、後者は質的データを取り扱うという相違があるが、いずれの研究も科学的研究である以上、研究者は基本的に研究対象とは距離を置いた直接の関わりのない存在であるという点や、データ収集前にデータ分析の枠組みを決定しておくという点は共通している。
解 説
選択肢 1 ですが
参与観察は、研究対象である社会や集団に調査者自身が加わり、生活をともにしつつ観察します。「観察者から対象への働き掛けは行わない」わけではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
「虚偽尺度」とは「意図的に自分をよく見せる」ような歪曲反応検出のため用意する尺度です。「社会的に望ましいが、まぁやらない行為」及び「社会的に望ましくないが、まぁやる行為」という項目で評価します。虚偽尺度を「組むこむ必要」が特にあるわけではありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
面接構造は大きく、構造化、半構造化、非構造化 の 3 つに分類されます。「自由面接」というのは、自由に面接を行うという意味だと考えられます。それは「非構造化」に分類されます。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当な記述です。
選択肢 5 ですが
「前者が量的データ、後者が質的データを扱う」という記述から誤りと判断できるのではないでしょうか。仮説検証型であっても質的データを扱う場合はあります。また、仮説生成型であったえも量的データを扱う場合もあります。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 4 です。
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