公務員試験 H27年 法務省専門職員 No.23解説

 問 題     

記憶に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1. 記憶は、保持時間の長さに基づいて感覚記憶、短期記憶及び長期記憶に分けられる。このうち短期記憶は、初めて聞いた電話番号を覚えているのが難しいように、情報処理容量が7±2字程度と考えられている。また、長期記憶に送られない情報は、4~5分で忘却される。

2. 長期記憶に保持されている記憶は、宣言的記憶と意味記憶に分けられる。例えば、車を発進させるための一連の手順に関する記憶は宣言的記憶であり、駐車場のどこに車を停めたかに関する記憶は意味記憶である。このうち、宣言的記憶は言葉で記述できるとは限らない。

3. バッデリー (Baddeley, A. D.) によると、作動記憶は、言語的情報を扱う音声ループと、視・空間的情報を扱う視・空間スケッチパッドとの二つのシステムから成ると仮定されている。作動記憶は情報を一時的に保持する機能であり、情報の処理は海馬にある中央制御部が行う。

4. 代表的な記憶の測定方法に、記銘項目を口頭や筆記で再生成する「再生」と、示された材料の中から記銘項目を同定する「再認」がある。一般には、自由に回答できるため「再生」の方が容易であり、記憶成績も良いことが示されている。

5. 単語リスト提示後の自由再生において、最初の方に提示された単語と終わりの方で提示された単語の再生率が高くなることを、系列位置効果という。リスト提示後に数十秒間、計算など別の課題を行わせ、その後再生を求めると、系列位置効果のうち新近効果が消失する。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが
短期記憶における情報処理容量は 7±2 「項目(チャンク)」程度と考えられています。「字」ではありません。また、長期記憶に送られない情報については「10 ~ 30 秒程度」しか保持されません。「4 ~ 5 分」ではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
長期記憶の中で、意識にあげられる記憶を宣言的記憶 or 明示記憶といいます。逆に、いちいち言語を介さずできる、意識にのぼらせることができないものを非宣言的記憶といいます。車を発進させるための一連の記憶は、非宣言的記憶の中でも手続き記憶と呼ばれます。「車を発信させるための一連の手順に関する記憶は宣言的記憶」ではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
バッデリーのワーキングメモリ(作動記憶)モデル では、作動記憶は 4 つのシステム(視空間スケッチパッド、エピソードバッファ、音韻ループ に加え、長期記憶からの情報を統合し、様々な認知活動を行う中央制御系)から成ると仮定します。「2つ」ではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
5択と記述問題の主観的難易度を考えれば、「再生」の方が難しいと判断できるのではないでしょうか。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当な記述です。
初めを覚えやすいのが初頭効果、終わりを覚えやすいのが新近効果です。

以上より、正解は 5 です。

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