問 題
パーソナリティの研究に関する記述として最も妥当なのはどれか。
1. トマスとチェス (Thomas, A. & Chess, S.) は、乳幼児期の行動特徴に関する縦断的調査から、九つの気質特性と三つの気質のタイプを導き出した。その後 10 年以上にわたる追跡調査の結果,乳幼児期の気難しさと成人後の問題行動との間に高い相関があるなど、乳幼児期の気質特性と成人後の行動特性との関連性を示し、気質の連続性を明らかにした。
2. サイモンズ (Symonds, P. M.) は、親の養育態度と子どもの性格特性との関連性について研究した。その結果、支配的な親の子どもは無責任で自信家で粗暴な傾向があり、服従的な親の子どもは冷淡で落ち着きがなく反社会的な傾向があり、拒否的な親の子どもは自発性がなく消極的な傾向があるとし、保護的な養育態度が最も理想的だとした。
3. サメロフ (Sameroff, A. J.) は、相乗的相互作用モデルを提案し、子どもの気質と、養育者側のパーソナリティや育児観といった諸要因が、時間の経過の中で互いに影響を受け合って性格が形成されるとした。また5~6歳頃までには、こうした相互作用や性格が固定化するため、幼児期の親子関係不全は早期に介入しないと修復困難になると考えた。
4. マーシャ (Marcia, J. E.) は、青年期の同一性の在り方を、同一性達成、モラトリアム、早期完了、同一性拡散の四つの地位 (status) に分類し、それぞれについて、同一性達成の者は自律的,早期完了の者は権威主義的などの性格特徴が認められるとした。しかし、青年期に同一性達成の地位にある者でも、その後他の地位に変化していく可能性があるといわれている。
5. 老年期の性格特徴の理解においては、様々な否定的ステレオタイプが存在するが、実際に、これまでの縦断的研究等による知見では、高齢者には一般的に、自己中心的、保守的、用心深さ、頑固さといった性格特徴が認められている。こうした性格特徴が、高齢者の交際範囲を狭め、生活環境の孤立化を招く一因になっているとされている。
解 説
選択肢 1 ですが
トマスとチェスのニューヨーク縦断研究についてです。前半部分は正しい記述です。しかし「乳幼児期の気難しさと、成人後の問題行動の高い相関」は見られていません。また、気質について「連続性」が明らかになっている、とはいえません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
サイモンズの養育態度の 4 分類において「理想的」なものはなく、バランスがとれていることが理想的とされます。この知識がなくても「支配的な親 → 無責任、自信家、粗暴」や「服従的な親→冷淡、落ち着きがない、反社会的傾向」という対応に疑問を感じるのではないでしょうか。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
サメロフの相互作用説についてです。前半部分は妥当な記述です。後半の「5 ~ 6 歳頃までには・・・相互作用や性格が固定化する」という記述は妥当ではありません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当な記述です。
選択肢 5 ですが
高齢者に一般的に認められる性格特徴は知られていません。「一般的に・・・」は言いすぎだろうと判断したい選択肢です。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 4 です。
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