公務員試験 H27年 法務省専門職員 No.2解説

 問 題     

セリグマン (Seligman, M. E. P.) が提唱し、アブラムソン (Abramson, L. Y.) らの研究によって精緻化された学習性無力感 (learned helplessness) に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1. 研究は、当初、イヌを対象として始められ、その後、人を対象とした研究に移行したが、人を対象とした研究でもイヌを対象とした研究と同様の結果が得られたことから、人の無気力状態は,予測不可能性と統制不可能性の学習により成立するという最終結論に至った。

2. 人の場合、学習性無力感には動機づけの要因は関与しておらず、自力では事態の解決ができない状態が続いても、事態を解決しようとする動機づけは維持されるが、その場合でも実際の解決のための行動は減少し、消化管での潰瘍発生、抑うつなどの心身の不調が生じる。

3. 帰属理論の観点からの説明によると、コントロールできない事態の原因を、自分の能力等の内的要因に帰属させるよりも、問題の解決困難性などの外的要因に帰属させる方が無気力状態が生じやすく、また、慢性化もしやすいとされる。

4. 人が、不治の宣告を受けるなどして病気に対する自分の無力さを自覚し、うつ状態となる場合などでは、学習性無力感のメカニズムが作用するとされる。こうした人の場合とイヌの場合との共通性は、解決のための行為とその結果との間に知覚される随伴性が欠如していることである。

5. 失敗や困難を自分の努力不足に帰属させる人の方が、能力不足に帰属させる人よりも無気力傾向が高まるという研究結果などから、帰属療法が開発された。これは、認知の仕方を治療対象としており、認知療法の基になっている。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

学習性無力感とは
行動が結果に結びつかないことを学習、何をしても無駄と認知した結果、不快に対する解決への試みが放棄されて無気力になることです。

選択肢 1 ですが
「予測不可能性」は不要と考えられます。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
「動機づけの要因が関与しておらず」という部分が誤りです。動機づけが働かなくなるのが学習性無力感といえます。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3,5 は帰属理論についての記述です。
ある結果の原因を何に求めるかが、原因帰属です。原因帰属は 3 次元(位置(自分のせい、周囲のせい)・安定性(時間的に安定したもの、しないもの)・統制可能性(コントロール可能な原因、不可能な原因)で理解できるとされます。例えば、ある結果の原因を運のせいにするのは、「周囲、時間的に安定しない、コントロール不可能なもの」のせいにしていると理解できます。

学習性無力感は「自分のせい、時間的に安定したもののせい」といった帰属をする人で、さらに全般性の次元(ある出来事を、あらゆる局面で生じると考える)を有する人が陥りやすいと考えられています。

選択肢 3 ですが
「外的」に帰属する方が、生じにくいと考えられます。

選択肢 5 ですが
「努力不足」は、努力により変化するので、時間的に不安定な帰属です。「能力不足」は、努力で変化せず、時間的に安定な帰属です。能力不足に帰属させる方が無気力傾向が高まると考えられます。選択肢 5 は誤りです。

選択肢 4 は妥当な記述です。

以上より、正解は 4 です。

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