公務員試験 H27年 国家一般職(行政) No.46解説

 問 題     

企業の戦略に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。

1. 後発の優位の源泉は大きく二つに分けられる。一つは技術的リーダーシップで、先発企業と同一の技術と生産方式を利用することができるので、後発企業は技術開発や設備への投資を節約することができる。もう一つはコストリーダーシップで、先発企業が既に市場を開拓しているため,後発企業は先発企業と同様の経験曲線効果を直ちに得られてコスト削減が可能となる。

2. 米国のコンサルティング会社アクセンチュアが考案したプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント (PPM) は、経験曲線という累積生産量と加工時間に関する経験則を前提とする。この経験則では、累積生産量が倍加するごとに、製品1単位を生産するのに要する加工時間が5~10 % 逓減する。

3. 競争優位の源泉を企業の保有する資源に求めるリソース・ベースド・ビュー (RBV) は、1970 年代までの戦略論の主要な考え方であり、企業の外部組織への資源依存度が環境の不確実性と収益性を左右するというものである。しかし、1980 年代半ばには、産業構造や独占などの市場特性に優位の源泉を求めるポジショニング・アプローチが登場し、現在では VRIO と呼ばれる分析方法が戦略論の主流になっている。

4. 企業の成長の方向性を、組織の意思決定プロセスの議論を基礎とした考え方で分析する手法が,H.I.アンゾフの成長ベクトルである。企業の成長の方向性を市場と製品の2軸で分類すると、市場浸透、市場開発、製品開発、多角化の四つの代替案をとり得ることになる。企業は各代替案の実現可能性やリスクを検討し、成長の方向性を選択、決定する。

5. 製品ライフサイクルにおける価格戦略は、主要顧客の性質に応じて、適切な戦略が異なる。例えば、イノベーターやアーリーアダプターが顧客となる段階では、初期投資を早期に回収する必要があるので、赤字覚悟の低価格を設定する上澄み吸収価格戦略か、コストを大きく上回る価格を維持する利益志向価格戦略が有効とされている。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

選択肢 1 ですが
技術的リーダーシップは、技術上の優位性のことです。コストリーダーシップは、低価格で商品やサービスを提供する、あるいは原価を抑えて利益率を増大させることで、優位性を確立する戦略のことです。どちらも内容が違います。また、「後発の優位の源泉」を表す用語として不適切です。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
プロダクト・ポートフォリオ・マネージメント(PPM) は、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が1970年代に開発した、どの事業領域に自社経営資源を分配すべきか判断するためのフレームワークです。(H26no48)。経験曲線とは、製品の累積生産量が増加すると、単位当たりコストが一定割合で低下していく経験則です。PPM と同じく、BCG が提唱しました。一般に、累積生産量が 2 倍ごとに、1個あたりのコストが 10~30 % ずつ減少します。(減少率は業界や製品により異なります)。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
VRIO は、資源の価値や希少性などを分析するフレームワークです。リソース・ベースド・ビューにおける分析手法です。ポジショニングアプローチにおける代表的分析手法は、ファイブ・フォース・モデルです。提唱者はそれぞれ、VRIO フレームワークは、ジェイ・B・バーニー、ファイブ・フォース・モデルは、M.E.ポーターです。(H26no48)。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。
戦略的経営の父と呼ばれたアンゾフによる、企業の成長戦略を4つに類型化した「成長ベクトル」についての記述です。

選択肢 5 ですが
上澄み吸収価格戦略は、開発費用の早期回収を目指し、イノベーターやアーリーアダプターが顧客となる製品投入初期に高価格設定し、回収とともに次第に価格を下げ、利益最大化を図る戦略です。「赤字覚悟の低価格を設定する」戦略ではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4 です。
類題 H26no48 

コメント