公務員試験 H27年 国家一般職(行政) No.29解説

 問 題     

使用貸借に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

ア. 使用貸借は、借主が物を受け取ることによってその効力が生じる。「受け取る」とは、借主が物の引渡しを受けることであるが、使用貸借の効力が生じるためには、簡易の引渡しや占有改定では足りず、借主への現実の引渡しが必要である。

イ. 使用貸借において、借主が、貸主の承諾を得ずに借用物を第三者に使用又は収益をさせた場合、貸主は、借主に催告をしなければ、契約を解除することはできない。

ウ. 使用貸借の借主は、無償で借用物の使用及び収益をすることができることとの均衡を図るため、特約のない限り、借用物の通常の必要費、災害により破損した借用物の修繕費等の特別の必要費及び借用物の有益費のいずれも負担しなければならない。

エ. 使用貸借の借主は、無償で借用物の使用及び収益をすることができるのであるから、借用物に瑕疵があったとしても、貸主は、特約のない限り、担保責任を負うことはない。

オ. 使用貸借は、返還時期の定めがある場合、期限到来により終了する。また、使用貸借は、借主が死亡した場合も、特約のない限り、終了する。

1. イ
2. オ
3. ア、ウ
4. イ、エ
5. エ、オ

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

民法改正で大きく変わったポイントがあります!使用貸借は、もともと目的物の授受を成立要件とした要物契約とされていました。改正民法により、要物契約から諾成契約へと改め、さらに、契約が終了時における借主の返還義務を明文化しました

記述 ア ですが
改正民法第 593 条により、「使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生」じます。記述 ア は誤りです。

記述 イ ですが
使用貸借において、借主は、貸主の承諾なく、第三者に使用収益させることができません。違反した場合、貸主は催告を要することなく、契約解除できます。(民法第 594 条)。記述 イ は誤りです。

記述 ウ ですが
民法第 595 条が、借用物の費用の負担についての条項です。第 1 項により、「借主は、借用物の通常の必要費を負担」します。第 2 項により、通常の必要費以外については、借主が貸主に対し償還請求できます。「特別の必要費(自然災害により損傷した場合の修理費など)」や「有益費(物を改良し、価値を増加させるための費用)」の「いずれも負担しなければならない」わけではありません。記述 ウ は誤りです。

記述 エ ですが
民法第 596 が準用する 551 条により、貸主の担保責任は「瑕疵や権利の不存在について悪意の黙秘」について例外的に責任が発生します。「特約のない限り・・・負うことはない」わけではありません。記述 エ は誤りです。

記述 オ は妥当です。
期間満了等による使用貸借の終了 について改正民法第 597 条です。改正民法第 597 条 3 項が、借主死亡時についての条項です。

以上より、正解は 2 です。

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