公務員試験 H27年 国家一般職(行政) No.26解説

 問 題     

保証債務に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。

ア. 主たる債務について二人の連帯保証人がある場合、各連帯保証人は、債務者に対して主たる債務の2分の1の額についてのみ保証債務を負う。

イ. 主たる債務が弁済期にある場合、保証人は、主たる債務者の委託を受けないで保証をしたときであっても、主たる債務者に対して事前求償権を行使することができるが、主たる債務者の意思に反して保証をしたときは、事前求償権を行使することができない。

ウ. 特定物の売買における売主のための保証においては、保証人は、特に反対の意思表示のない限り、売主の債務不履行により契約が解除された場合における原状回復義務についても保証の責めに任ずる。

エ. 貸金債務等の根保証契約は、自然人が保証人であっても法人が保証人であっても、極度額を定めなければ効力を生じない。

オ. 債権者が主たる債務者に対して債務の履行を催告した後に保証人の財産について執行してきた場合、保証人は、主たる債務者に弁済の資力があり、かつ、執行が容易であることを証明して、まず主たる債務者の財産に対して執行すべきことを主張することができる。

1. ア、ウ
2. ア、エ
3. イ、エ
4. イ、オ
5. ウ、オ

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

保証人と、連帯保証人立場が異なります。連帯保証人は債務者と「同じ立場」で責任を負います。連帯保証人の方が責任が大きいです。

代表的な違いとして、保証人は、催告の抗弁、検索の抗弁ができます。(民法第 452 条、453 条)。すなわち「債務者を差し置いて保証人からってのはおかしくない?」と言えます。しかし、民法第 454 条の通り、連帯保証人には、この2つの抗弁は認められていません。さらに、保証人が複数人いた時、負担割合が軽減される「分別の利益」も、連帯保証人は有しません

記述 ア ですが
連帯保証人が複数いる場合、各自が全額の保証債務を負います。「二人の連帯保証人がある場合、・・・2 分の 1 の額についてのみ」ではありません。記述 ア は誤りです。※確実に判断したい記述。

記述 イ ですが
事前求償権を行使できるのは、主たる債務者から「委託を受けた」保証人だけです。「主たる債務者の委託を受けないで保証をしたときであっても、・・・事前求償権を行使できる」わけではありません。

ちなみに、なぜ委託を受けることが必要かというと、以下のような構成になります。委託を受けた→委任の一種→委任について、委任事務処理費用の前払請求権が認められている(民法第 649 条)→ 保証も「先に払え」といえることになる という流れです。とはいえ、常に事前求償権を認めると、債権者にその金がダイレクトにいけばいいのに・・・などと不都合が生じるため、民法第 460 条 が「委任を受けた保証人の事前求償権について」を具体的に規定しています。 ちなみに、ここでいう「事前」とは、保証人が保証債務を履行する前、です。主債務の弁済期到来前ではないため、注意が必要です。

記述 ウ は妥当です。
保証債務の範囲について、民法第 447 条の規定です。

改正ポイント!記述 エ ですが
本試験時点において、極度額を定めなければ効力を生じないのは「自然人」の「貸金等根保証契約」についてでした。改正民法により、自然人の保証契約一般について、極度額を定めなければ効力を生じない、という内容に拡張されました。どちらにせよ、法人が保証人の場合、極度額を定めなくても、効力は生じます。記述 エ は誤りです。

記述 オ は妥当です。
民法第453 条、検索の抗弁の記述です。

以上より、正解は 5 です。

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