公務員試験 H27年 国家一般職(行政) No.25解説

 問 題     

抵当権の消滅に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。

1. Aは、債権者Bに負う債務を担保するために、Aの所有する甲建物につき抵当権を設定し、その後、甲建物をCに売却した。甲建物について所有権を買い受けた第三取得者Cが、Bの請求に応じてBに甲建物の代価を弁済した場合は、Bの甲建物上の抵当権は、Cのために消滅する。

2. Aは、債権者Bに負う債務を担保するために、Aの所有する甲建物につき抵当権を設定し、その後、甲建物をCに売却した。甲建物について所有権を買い受けた第三取得者Cは、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前にBの請求がある場合に限り、Bの甲建物上の抵当権につき消滅請求をすることができる。

3. Aは、債権者Bに負う債務を担保するために、Aの所有する甲建物につき抵当権を設定した。その後、Aが死亡してBがAを単独相続した場合、原則としてBの甲建物上の抵当権は消滅しない。

4. Aは、債権者Bに負う債務を担保するために、Aの所有する甲建物につき抵当権を設定した。その後、Aが甲建物をAの失火により焼失させた場合、Bの甲建物上の抵当権は消滅しない。

5. Aは、Aの所有する甲土地に隣接するB所有の乙土地を自己の所有に属すると信じ、占有していたが、乙土地には、Bが債権者Cに負う債務を担保するために、抵当権が設定されていた。この場合、Aが取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときであっても、Cの乙土地上の抵当権は消滅しない。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

選択肢 1,2 は「抵当権設定者 A が、抵当権付不動産である甲建物を第三者 C に売却した場合について」です。

選択肢 1 は妥当です。
抵当権消滅請求(民法第 379 条)についての記述です。

選択肢 2 ですが
「債権者による請求」は、代価弁済(民法第 378 条)についての記述です。消滅請求は、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前であれば可能です。(民法第 382 条)。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3,4 は「抵当権設定後、死亡による相続や、滅失があった場合について」です。

選択肢 3 ですが
相続により所有権と抵当権が混同します。民法第 179 条により、抵当権が消滅します。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
建物がなくなるのに伴い、抵当権も消滅します。選択肢 4 は誤りです。※債務は消滅しません。

選択肢 5 ですが
債務者又は抵当権設定者でない者が、抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅します。(民法第 397 条)。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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