問 題
動産の取引に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
ア. 道路運送車両法 (昭和 44 年法律第 68 号による改正前のもの) による登録をいまだ受けていない自動車については、即時取得が認められるが、一度登録を受けた自動車については、その後,当該自動車が抹消登録を受けたとしても、即時取得は認められない。
イ. 即時取得が認められるためには、占有の取得が平穏・公然・善意・無過失に行われる必要があるが、即時取得を主張する占有取得者は、自己に過失のないことの立証を要する。
ウ. 即時取得が認められるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるような占有を取得することが必要であり、占有取得の方法が一般外観上従来の占有状態に変更を来さないいわゆる占有改定の方法による取得では、即時取得は認められない。
エ. 即時取得が認められるためには、取引行為の存在が必要であるが、競売により執行債務者の所有に属しない動産を買い受けた場合は、取引行為が存在したとはいえず、即時取得は認められない。
オ. Aが自己の意思に基づき、自己の所有する動産甲をBに預けたところ、Bが甲を横領してCに売り渡した場合、甲はAの意思に反してCに処分されているため、甲の即時取得の成立が猶予され、Aは、甲を横領された時から2年間、Cに対して甲の回復を請求することができる。
1. ウ
2. エ
3. ア、ウ
4. イ、エ
5. イ、オ
解 説
記述 ア ですが
不動産登記と同様、「公的な登録がされている自動車」は即時取得ができないのが原則です。しかし、判例(最判 S45.12.4) によれば、抹消登録を受けたものは即時取得の対象となります。「抹消登録を受けたとしても、即時取得は認められない」わけではありません。記述 ア は誤りです。
記述 イ ですが
前半部分は妥当です。即時取得の要件である「平穏・公然、善意無過失」です。平穏・公然、及び善意については、民法 第 186 条により推定されます。そして、無過失についても、最判昭和41年6月9日によれば、民法第 188 条に基づき、無過失と推定され、立証不要とされています。「自己に過失のないことの立証を要する」わけではありません。記述 イ は誤りです。
記述 ウ は妥当です。
最判 S35.2.11 によれば、占有改定による引渡しでは、民法 192 条の「占有を始めた」にあたりません。従って、即時取得は認められません。
記述 エ ですが
最判 S42.5.30 によれば、競売であっても、民法第 192 条の要件を具備すれば即時取得できると解すべき、と判示しています。記述 エ は誤りです。
記述 オ ですが
民法 第 193 条により「盗品」であれば、2 年間回復請求できます。しかし、大判明 41.10.8 によれば、詐欺や横領で占有を失った場合については、回復請求は認められないとしています。従って、記述 オ は誤りです。
以上より、正解は 1 です。
コメント