問 題
予算と決算に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。
1. 予算編成の意思決定方式は、各局の総務課等が各課等からの予算要求原案に関するヒアリングを経て内示し、不同意の場合には復活要求がなされる局内の過程を経て、省庁・行政府レベルへと続き、文書を用いて行われることから、西尾勝によれば稟議書型の意思決定に分類される。
2. 概算要求基準 (シーリング) とは、平成 21 (2009) 年の民主党政権の発足に伴って導入された予算編成に関するもので、各省庁が財務省に概算要求する際に要求できる上限を前年度比で示す予算基準であり、この基準を用い、経済財政諮問会議と財務省主計局が予算総額を管理する。
3. 会計検査院は、内閣法 90 条に基づく内閣の付属機関で、国会の同意に基づいて内閣が任命する3人の検査官による検査官会議を意思決定機関とし、国の収入支出の決算を検査し確認すること、常時会計検査を行って会計経理を監督し、適正を期し、是正を図ることなどを役割とする。
4. W.ニスカネンは、予算極大化 (最大化) モデルを提唱し、官僚は自らの所属する行政機関の予算を可能な限り最大化させようとするのに対し、政治家は予算に関する情報を十分持たないことから官僚の統制不足が生じ、最適なサービス量以上の予算が決定されるとした。
5. G.アリソンは、実現可能な三つ程度の選択肢を摘出して比較するにとどめて、短期間での決定を重視することにより漸進的に政策の変更を繰り返すという政策形成過程のモデルを考案し、それを予算編成過程に適用した場合には、新規の増分のみ厳しく審査することにより予算は迅速に決定されるとした。
解 説
選択肢 1 ですが
稟議書(ひんぎしょ)型とは、起案した文書(稟議書)を、上長や関係部署間に回覧し決裁を受けていく制度です。上司、その上司・・・とハンコ押してもらうやつです。会議でわざわざみんな集まらなくていいというメリットがあります。予算編成などは、記述のように、議論しつつ行ったり来たりなので「非稟議書型」です。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
概算要求基準(シーリング)は、1961 年の予算概算要求枠に端を発する制度です。2009 年鳩山由紀夫内閣が廃止しましたが、要求額が増大し、翌年菅直人内閣が復活させています。「平成 21 年の民主党政権の発足に伴って導入された」ものではありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
会計検査院の根拠法は「憲法」 90 条です。内閣法ではありません。また、内閣から「独立して存在する国家機関」です。内閣の「付属機関」ではありません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当です。
ニスカネンの予算最大化モデルについての記述です。
選択肢 5 ですが
G.アリソンは、政策決定過程を3つのモデルに分類しました。組織が完全に合理的個人と同様に、合理的に政策を決定するモデルである「合理モデル」と、現実に近い2つのモデルである「組織過程モデル」及び「組織内政治モデル」です。(H26no8)。「実現可能な三つ程度の選択肢」、「短時間での決定を重視」、「漸進的に政策の変更を繰り返す」といった部分から、記述はリンドブロムのインクリメンタリズムと考えられます。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 4 です。
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