公務員試験 H26年 国家専門職(食品衛生監視員) No.4毒性学Ⅰ(2)解説

 問 題     

発がん性に関する記述 ①~⑤ について、妥当なものには ○ を、妥当でないものには × をそれぞれ記せ。

① 現在一般的に唱えられている多段階発がん説においては第一段階のイニシエーション,第二段階のプロモーション、第三段階のプログレッションを経て、細胞は悪性化し、がん細胞へと変化するものと考えられている。

② ジメチルニトロソアミンとベンゾ[a]ピレンはイニシエーター、塩化ナトリウムとサッカリンはプロモーターであると考えられている。

③ 一次発がん物質とはDNA と直接反応するものである。二次発がん物質とは生体内で代謝されDNA と反応するものをいい、DNA と反応する代謝産物を究極発がん物質という。

④ 復帰突然変異試験(Ames 試験)は変異原性試験の一つであり動物細胞の変異型から野生型への突然変異を利用するものである。

⑤ ベンゾ[a]ピレンは生体内でシトクロム P450 により代謝を受けてエポキシド体となることにより発がん性を示す。

 

 

 

 

 

 解 説     

①は、正しい記述です。

②ですが
正しい記述という判断でよいと思われます。ベンゾ[a]ピレンはイニシエータ作用、プロモータ作用の「両方がある」と考えられています。また、サッカリンについては動物においてはプロモータ作用を有しますが、それが「ヒトに成立するわけではない」と考えられています。

このような点から疑問はあるのですが、「~であると考えられている」という断定でない文末に加え、あくまでも発がん性について、ということで「ヒトの」という限定もないことから、正しい記述として出題されていると考えられます。

③は、正しい記述です。
ここでの「究極」は「最終的な」ぐらいの意味です。つい「究極のメニュー」などの用いられ方から「最高の、最強の」といった意味を連想してしまうかもしれませんが、そうではなく、代謝における最終点といった意味合いです。また、代表的一次発がん物質はナイトロジェンマスタードなどです。

④ですが
Ames 試験で用いるのは、ネズミチフス菌か大腸菌です。「動物細胞」の突然変異を利用するわけではありません。

⑤は、正しい記述です。

以上より、①◯、②◯、③◯、④☓、⑤◯ と考えられます。

コメント