公務員試験 H26年 国家一般職(農学) No.2解説

 問 題     

作物と水の関係に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1. 作物が利用できる土壌水分は圃場容水量と初期しおれ点の間にある有効水分である。圃場容水量は畑状態の土壌に十分な降雨があった後約1週間して重力水が流れ去ったときの水分量である。また初期しおれ点は乾燥で植物がしおれて灌水してもしおれが回復せず枯死する水分量である。

2. 作物による水の利用特性を示す指標に要水量がある。要水量とは作物の乾物1g を生産するのに必要とする水の量(g)であり生育期間中の全蒸散量を全乾物重で除して求められる。C3 植物は C4 植物より一般に要水量が大きいことが多い。

3. 水田の水管理では分げつ期には2~4cm の浅水灌漑として昼の水温・地温を高めて分げつを促す。幼穂分化期の15~10日前から幼穂分化期までは必要水分量が多いため必ず深水状態に保つ。出穂後7~10日頃に田面水を全て排出(落水)し収穫作業に備える。

4. 代表的な畑地の灌漑法には点滴灌漑スプリンクラ灌漑畝間灌漑がある。設置コストは点滴灌漑<スプリンクラ灌漑<畝間灌漑の順に高くなり灌漑効率も同様に高くなる。スプリンクラ灌漑には傾斜地で利用できないという欠点があるが液肥などの散布に利用できるなどの利点がある。

5. 大豆などの畑作物では播種が梅雨時期と重なり過湿により苗立ち不良となることが多い。これは過湿土壌では酸素濃度や二酸化炭素濃度の低下によって根や根粒の呼吸が低下し作物の成長が阻害されるためである。イネでも湿田では苗の活着が不良となるので乾田化が進められている。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

選択肢 1 ですが
圃場容水量」は、雨が降って、2~3日後の水分状態のことです。「水をどれくらい蓄えられるか」というイメージです。「初期しおれ点」は、根が水を吸収できなくなる点のことです。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は、妥当な記述です。

選択肢 3 ですが
深水で分げつ促進→中干し→幼穂分化期までの期間は間断灌漑→徐々に浅水へ移行が一般的です。また、出穂後の落水は、出穂30日後ぐらいが目安です。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
設置コストが高いのが点滴灌漑です。また、スプリンクラ灌漑は傾斜地で利用できます。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
苗の「活着」とは、田植した苗から、白い新しい根が出た状態のことです。およそ田植え7日後です。活着までは深水管理します。「湿田では活着が不良」は明らかに誤りです。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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