問 題
作物と微生物の関係に関する記述として最も妥当なのはどれか。
1. 根の表面から数cm 程度の範囲の土壌は他の領域とはイオンの組成・濃度や微生物の種類・量が異なっており有効土層と呼ばれる。この領域には根から糖類や有機酸などが分泌されているためそれらを栄養源とする細菌糸状菌などが集積している。
2. 根粒菌は菌類の一種でマメ科作物の根に侵入し根の細胞分裂を誘発して数mm~1cm のこぶ(根粒)を形成する。根粒菌にはいくつかの種類があるがその寄主特異性は低くそれぞれの菌は基本的にどのマメ科作物においても根粒を形成する。
3. 根粒菌は空気中の窒素ガスをアンモニアに還元し宿主作物であるマメ科作物の根に供給する。根粒の窒素固定エネルギーは宿主の根から供給される光合成産物であるので根粒活性の維持には日射量が関与している。
4. 飼料作物のアカクローバでは根粒菌によって地下部だけでなく地上茎にも根粒が形成される。これは茎に分化した不定根の原基に菌が感染して根粒を形成するもので茎粒と呼ばれるが窒素固定は行わない。
5. エンドファイトとは植物体表面に付着する非病原性の微生物を意味する。エンドファイトの中には窒素固定能を持つものがありサツマイモやサトウキビなどでは植物体の窒素吸収の8~9割程度まで寄与している。エンドファイトの共生で病害抵抗性が付与される例もある。
解 説
選択肢 1 ですが
「有効土層」とは、作物の根が障害なく伸長することのできる状態の土層のことです。有効土層の深さが十分でないと、植物根の伸長や水分移動、養分吸収が制限されます。深耕や客土による不良土層を取り除く土層改良が対策として行なわれます。ちなみに、根の近傍は「根圏」と呼ばれます。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
根粒菌は「種特異的」にマメ科植物と共生します。「寄主特異性は低く」という部分が明らかに誤りです。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は、妥当な記述です。
選択肢 4 ですが
茎粒は根粒そのものと言ってよく、窒素固定を行っています。茎粒を形成する代表的植物はマメ科のセスバニアです。よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
「エンド」が「内側の」という意味です。エンドファイトは植物体内で共生的に生活している真菌や細菌のことです。よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 3 です。
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