公務員試験 H26年 国家一般職(化学) No.21解説

 問 題     

 周期表1族の元素に関する記述 ア ~ オ のうちから妥当なもののみを選び出しているのはどれか。

ア Liのイオン化エネルギーは、Cs のイオン化エネルギーより大きい。
イ Na+ の分極率は Cs+ の分極率より大きい。
ウ KCl の結晶構造と CsCl の結晶構造はともに NaCl 型である。
エ NaF と NaI の生成エンタルピーはともに負で、その絶対値は NaF の方が NaI より大きい。
オ LiF の水への溶解度は LiI の水への溶解度より大きい。

1. ア、イ
2. ア、エ
3. イ、ウ
4. ウ、オ
5. エ、オ
 

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

記述 ア は正しい記述です。1族元素のイオン化エネルギーは小さいです。そして同じ1族元素の中であれば周期表の下側へ行くほどさらに小さくなる傾向になります。Li は 1族元素の中では一番周期表の上側にいるので、イオン化エネルギーは大きいです。

ちなみにその理由としては、周期表の下側へ行くほど電子数が増えているので「最外殻電子」がより原子核よりも離れた所にあります。そのため、電気的な力による制約が弱まって「電子を 1個 取り去るのに必要なエネルギー」= 「イオン化エネルギー」が小さくなると考えられます。正解は 1 or 2 です。

記述 イ ですが
分極率とは、電場をかけたりした時に電子がどれくらい動くかを表す量です。すると、Na+ もCs+ も希ガスと同じ電子配置なのでそれほど動かず小さいと考えられます。同じ 1 族の中では、記述 ア の解説でも述べたように周期表の下側に行けばいくほど最外殻電子が外側で原子核よりも離れた所にあるため、下側にある原子の最外殻電子の方がひょいっと動きやすいと考えられます。従って、分極率が大きいのは Cs+ の方です。記述 イ は誤りです。

以上より、正解は 2 です。
 
ちなみに、記述 ウ ですが
KCl は NaCl 型結晶をとります。CsCl は CsCl 型 をとります。よって誤りです。

記述 エ は正しい記述です。安定な生成物との「エネルギー差」が生成エンタルピーです。従って、生成物がより安定である方が生成エンタルピーが大きい ということになります。生成物である NaF と NaI の安定性を比べると NaF の方が安定であると考えられます。

これらの化合物の安定性の違いは、陰イオンのイオン半径の違いに由来します。すなわちNaCl 型結晶を作ろうとした時I- は比較的 イオン半径が大きいためNa + との間隔が大きい配列で積み上がっていきます。そのため電気的制約が比較的弱くNaF と比べると不安定 ということです。

記述 オ ですが
で解説したように、それぞれの結晶の安定性について考えると陰イオンのイオン半径から LiF の方ががっちり安定した結晶と考えられます。従って水により溶けにくいと考えられます。つまり、LiF の水への溶解度は、Lil のものよりも小さいということです。よって、誤りです。

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