公務員試験 H26年 法務省専門職員 No.23解説

 問 題     

次は、ピアジェ (Piaget, J.) とヴィゴツキー (Vygotsky, L. S.) が言語獲得の問題をめぐって行った論争に関する記述であるが、A~Dに当てはまるものの組合せとして最も妥当なのはどれか。

子どもの思考と言語の発達については、古くから様々な議論がある。

ピアジェは子どもの思考の発達の源が個人の内的発生によるものと考えた。特に子どもの言語獲得初期に観察される、他者に向けられたものではない言語使用を A 言語として捉え、子どもの未分化な思考がそのまま言語に反映しているとした。このため A 言語は思考能力の発達や個人の社会化に伴って発達する、より知的な思考の獲得によって消滅するものであると考えた。

これとは対照的に、ヴィゴツキーは、人間の高次精神機能が言語や記号といった B の媒介なしには機能しないと考え、課題解決中に子どもの独り言が増加することに注目し、このような自分自身に向けられた発話を C とした。

ヴィゴツキーはピアジェと異なり、思考の発達の源は個人を取り巻く環境にあり、社会化された言語である D が徐々に子どもの中に取り込まれるとした。したがって、子どもが先に用いるのは D であり、発達とともに C と D とに分化していくと考えた。ヴィゴツキーはこの点において、文化歴史的アプローチと呼ばれる立場をとっている。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

ピアジェは、子どもの発達において「自閉的思考→社会的思考」の移行段階として自己中心的思考があり、付随して「自己中心語」があり、発達とともに消える不要なものととらえました。

一方ヴィゴツキーは、そもそも言葉はコミュニケーションの言葉すなわち「外言」として獲得されると考えました。そして発達に伴い、思考の道具として自分に向けて用いられるようになったものが「自己中心語」であると考えました。さらに、音声が抜け落ち「内言」へ移行し、自己中心語が外見上消滅しても内言として重要な役割を担う、と指摘しました。

記述 A は「自己中心的」です。

B は「道具」がキーワードです。「心理的道具」が入ります。

記述 C,D は「内言」、「外言」です。

以上より、正解は 5 です。

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