公務員試験 H26年 法務省専門職員 No.2解説

 問 題     

原始的防衛機制に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1. ジグムント・フロイト(Freud, S.)が提唱した精神分析理論における主要な概念の一つであり,エディプス期において異性の親への愛着と同性の親への敵意や競争心を抑圧することを基盤として成立するとされる。

2. 外的依存対象としての母親を重視したクライン(Klein, M.)に対しアンナ・フロイト(Freud, A.)は内的対象関係が客観的現実以上に現実性を持つとして生後3~4か月頃からの乳幼児が根源的な不安に対して自己を防衛するために活発に原始的防衛機制を用いると主張した。

3. カーンバーグ(Kernberg, O.)は原始的防衛機制が自我エス超自我の三層構造も未分化で自他の境界もまだ明確に区別されていない時期に成立すると主張した。そして人格構造を神経症的境界例的精神病的の水準に区別した上で神経症的人格構造を持つ者は原始的防衛機制を頻繁に用いるとした。

4. 原始的防衛機制の一つである投影性同一視は妄想的-分裂的態勢の中で起こる攻撃的・排出的対象関係の原型として定義される。万能感空想の一形態とされそこでは主体が分裂した自己の部分を対象に投影し対象はその投影された自己の部分と同一化される。

5. 原始的防衛機制の一つである合理化は自分のとった行為や態度思考感情などに対して論理的に妥当な一貫性のある説明あるいは倫理的に非難されず道徳的に受け入れられるような説明を付けることにより不安を起こすことなく自分の望んだ言動を遂行しようとする心的機制とされる。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

原始的防衛機制とは、自他の区別が未分化な発達早期の自我により用いられる防衛機制の総称です。具体的には、分裂、投影性同一視などです。メラニークラインが提唱しました。

選択肢 1 ですが
「抑圧」についての記述です。原始的防衛機制についてではありません。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
クラインとアンナ・フロイトは、対照的な理論を唱えた2人です。すなわち、子どもに対し大人に対する分析原則を使える派、使えない派という違いです。子どもの超自我が早くから発達済と考え、分析原則使えるとしたのがクラインです。

クラインが「母子関係を重視した」という点は妥当な記述です。しかし、原始的防衛機制をとなえたのはフロイトではなく、クラインです。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
神経症的(健常的)人格構造 と対応するのは、高次防衛機制です。原始的防衛機制ではありません。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当な記述です。
投影性同一視とは、「他人を通じて自分を見る+そうなるような働きかけを無自覚的にする」という防衛機制です。

選択肢 5 ですが
原始的防衛機制が、発達早期であることをふまえれば、合理化は原始的防衛機制ではないと判断できるのではないでしょうか。合理化は「防衛機制」の一種です。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4 です。

コメント