公務員試験 H26年 法務省専門職員 No.1解説

 問 題     

精神物理学と閾に関する記述 A~D のうち妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

A. 一般に視覚・聴覚などの感覚系の感度は弁別閾によって感覚系の精度は刺激閾によって表される。弁別閾は感覚を生じるのに必要な最小の刺激強度のことを指し絶対閾とも呼ばれる。一方刺激閾は二つの刺激の強さ(例えば明るさの差)や性質の区別(例えば色の違い)を感じ得る最小の刺激差(例えば明るさでは光の強度差色では波長差)を指す。

B. ウェーバー (Weber, E. H.) は、標準重量と比較重量の二つのおもりの重さを比べる実験で,弁別し得る最小の重量差(丁度可知差異)を調べた。例えば 300 g の標準重量に対して比較重量を 306g にしたときその差が初めて分かったとするとこのときの丁度可知差異は 6g となる。次に標準重量を 600g にすると丁度可知差異は 12g となるという結果が得られた。ウェーバーはこのような実験結果から、一般に、標準重量を S とし、丁度可知差異を ΔS とすると、これらの関係は ΔS/S = k (k は定数) という式で示されることを明らかにした。

C. フェヒナー (Fechner, G. T.) は、精神物理学を提唱し、ウェーバーの法則の中にその例を見いだし、それを発展させた。フェヒナーは感覚 (R) を量的に扱うことができるとみなし、弁別閾 (ΔS) に相当する感覚の増加量 (ΔR) は一定であると仮定して、「感覚 (R) は刺激強度 (S) の対数に比例して変化する」という結論を導いた。その関係式は、R = klogS (k は定数)となる。これをフェヒナーの法則という。

D. ミューラー (Muller, G. E.) は、フェヒナーの法則を実験的に吟味するために、例えば基準となる明るさを提示してこれを「10」としたとき、次に提示する種々の明るさがどれくらいかを数値で答えさせるという方法を考案した。このような方法をマグニチュード推定法といい、刺激強度 (S) と被検査者が答えた数値(心理量) (R) との間には線形的な比例関係が成り立つことを見いだした。

1. A
2. B
3. A D
4. B C
5. C D

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

記述 A ですが
「感覚を生じるのに必要な最小の刺激強度」は「刺激閾」です。「二つの刺激の強さや性質の区別をし得る最小刺激差」が「弁別閾」です。よって、記述 A は誤りです。

記述 B は妥当な記述です。
刺激の弁別閾が、基準の刺激強度に比例する という ウェーバーの法則です。

記述 C は妥当な記述です。
ウェーバーの法則を近似的に積分して導きました。

記述 D ですが
マグニチュード推定法を提案したのは「スティーブンス」です。よって、記述 D は誤りです。

以上より、妥当な記述は B,C です。正解は 4 です。

コメント