公務員試験 H26年 国家一般職(行政) No.46解説

 問 題     

イノベーション・マネジメントに関する次の記述のうち妥当なのはどれか。

1. イノベーション研究の第一人者である T.J.アレンが発見した重量級プロダクト・マネジャーは,企業外部の研究者コミュニティなどから得られる情報を、取捨選択し分かりやすく翻訳して技術者に伝達する役割を果たす。藤本隆宏は、重量級プロダクト・マネジャーの概念を発展させ,部門間調整と製品コンセプト推進の両方の機能を兼ね備えた、研究開発組織の強力なリーダーをゲートキーパーと定義した。

2. イノベーションの源泉には技術機会と市場機会という二つの捉え方がある。前者は、企業内で開発された新技術が製品化されることでイノベーションが生じるという考え方で、ディマンド・プルと呼ばれる。後者は、製品の使用者であるユーザーが新製品のアイデアを出し、場合によっては試作品の開発まで行い、それを基に企業が製品化することでイノベーションが生じるという考え方で、テクノロジー・プッシュと呼ばれる。

3. W.J.アバナシーと J.M.アッターバックは、産業の発展段階とイノベーションの発生頻度の関係を明らかにした。流動期は製品コンセプト自体の流動性が高いので、製品イノベーションと工程イノベーションの発生頻度が共に高いが、支配的な製品デザインであるデファクト・スタンダードが確立される移行期には、製品イノベーションの発生頻度が下がり、工程イノベーションの発生頻度の方が高くなる。しかし固定期には、企業間で生産方法が共通化するので、製品イノベーションの発生頻度が上がり、工程イノベーションの発生頻度よりも再び高くなる。

4. 製品アーキテクチャは、インターフェースの設計方法によって大きく二つに類型化される。一つはモジュラー型と呼ばれるもので、部品間で信号や動力をやりとりする連結部分であるインターフェースを標準化することで、機能と部品がほぼ一対一の対応関係を持つアーキテクチャである。他方、機能と部品が多対多の対応関係を持つアーキテクチャはインテグラル型と呼ばれ、部品間の相互依存問題が頻発するので製品全体を調整する必要が生じる。

5. 業界標準をめぐる規格間競争のアプローチは、クローズド・ポリシーとオープン・ポリシーに大別される。両者を比較すると、一般的には、クローズド・ポリシーは自社規格の仕様を公開しないので標準を早期に獲得しやすいが、補完財の供給にも経営資源を割くので標準獲得後の利潤確保が難しくなるのに対し、オープン・ポリシーでは自社規格の仕様を公開するので互換製品が乱立して標準を獲得しにくいものの、補完財が安価に大量供給されるので排他的に大きな利潤を確保しやすい。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

選択肢 1 ですが
T.J.アレンが発見したのが「ゲートキーパー」です。藤本隆宏らが提唱したのが「重量級プロダクト・マネージャー」です。それぞれについての記述は妥当ですが、用語と人名の対応が逆です。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
ディマンドが「需要、要求」という意味です。テクノロジーが「技術」です。ディマンドプルが市場機会に基づく考え方です。テクノロジープッシュが技術機会を源泉と捉える見方です。ディマンドプルとテクノロジー・プッシュが逆です。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
アバナシーとアッターバックによる「流動期→移行期→固定期」という、イノベーション・ダイナミクスモデルです。このモデルにおいて、流動期は「製品イノベーション 高頻度、工程イノベーション 低頻度」です。その後、市場における「ドミナントデザイン」が確立されると、後は工程イノベーションに力点が移るため、工程イノベーションが高頻度になる、という考え方です。「流動期は・・・発生頻度が共に高い」わけではありません。また、「固定期には・・・製品にイノベーションの発生頻度が高くなる」わけではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。
製品アーキテクチャにおけるモジュラー型インテグラル型についての記述です。

選択肢 5 ですが
一般的に、オープン・ポリシーの方が、みんなばーっと使ってくれるので「標準を早期に獲得しやすい」です。一方、クローズド・ポリシーの方が、「排他的に大きな利潤を確保しやすい」と考えられます。従って、クローズド・ポリシーとオープン・ポリシーが逆です。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4 です。

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