問 題
売買に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
ア. 買主が売主に対して手付を交付した場合、この手付が違約手付であることが売買契約書上で明らかなときは、違約手付と解約手付とを兼ねることは不可能であるから、この手付は解約手付を兼ねる違約手付ではないとされる。
イ. 買主が売買の一方の予約をした場合、買主が売主に対して売買を完結する意思を表示したときは、売主は契約を承諾する義務を負うが、売買の効力は生じない。
ウ. 売主は、買主に対し、売買の目的である財産権を買主へ移転する義務を負うが、売買の目的物が不動産である場合、売主は、買主に対し、不動産の引渡しだけではなく、買主が不動産の対抗要件を具備することに協力する義務を負う。
エ. 売主が、買主に対し、売買契約時において隠れた瑕疵のある建物を売却した場合、買主は、その瑕疵のため契約をした目的を達することができないときは、売買契約の解除をすることができる。
オ. 売主が、買主に対し、他人の土地を売却したが、その権利を取得して買主に移転することができない場合であっても、買主は、契約時においてその権利が売主に属しないことを知っていたときは、売買契約を解除することができない。
1. アイ
2. アオ
3. イエ
4. ウエ
5. ウオ
解 説
記述 ア ですが
手付とは契約締結の際に、当事者の一方から他方に対して交付する金銭などの有償物のことです。手付は解約手付、証約手付、違約手付の 3 種類があります。民法で手付といえば、原則的に解約手付です。違約手付と解約手付を兼ねてもよいとされています。記述 ア は誤りです。
記述 イ ですが
売買の一方の予約は、相手方が売買を完結する意思を表示した時から、売買の効力を生じます。(民法第 556 条 1 項)。従って、「売買の効力は生じない」わけではありません。記述 イ は誤りです。
記述 ウ は妥当です。
権利移転の対抗要件に係る売主の義務です。新設された改正民法第 560 条です。旧来は、民法第 555 条に基づき財産権移転義務があり、判例に基づき不動産の売主に登記義務があると解されていました。
試験時点において、記述 エ は妥当です。
ただし、改正民法により、「隠れた瑕疵」は「瑕疵担保責任」に関する用語ですが、瑕疵担保責任に変わり、新たに「契約不適合責任(けいやくふてきごうせきにん)」が制定されました。これに伴い「隠れた瑕疵」という概念は消失します。注意が必要です。
記述 オ ですが
悪意の買主も解除できます。売主が「私の土地ではないが、既に買うことが決まっているんです」といった話に買主が乗るケースを考えると、権利関係について買主が知っていたとしても、解除できないのは酷と判断できるのではないでしょうか。記述 オ は誤りです。
以上より、正解は 4 です。
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