公務員試験 H26年 国家一般職(行政) No.28解説

 問 題     

同時履行の抗弁権に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。

1. 双務契約の当事者の一方は、相手方の同時履行の抗弁権を消滅させるためには、常に相手方に対して現実の提供をすることが必要である。

2. 双務契約の当事者の一方は、契約の相手方に対して同時履行の抗弁権を行使した場合であっても、契約上の債務の履行期日を徒過すれば債務不履行の責任を負う。

3. 双務契約の当事者の一方が契約の相手方に対して訴訟上で債務の履行を請求する場合であっても、その相手方が同時履行の抗弁権を主張したときは、請求が棄却される。

4. 同時履行の抗弁権は、留置権と同様、公平の見地から認められる制度であるから、契約当事者以外の第三者に対しても行使することができる。

5. 双務契約である売買契約の解除によって発生した原状回復義務につき、売主及び買主は、原状回復義務の履行について、互いに同時履行の抗弁権を行使することができる。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが
弁済の提供の方法について、「弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。」(民法第 493 条)。とあります。従って「常に・・・現実の提供をすることが必要」ではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
同時履行の抗弁権の効果として、履行遅滞に陥らなくなります。従って、履行期日を徒過しても、債務不履行ではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
訴訟上で適法に同時履行の抗弁権を主張された時は、引換給付判決がなされます。請求が棄却されるわけではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
留置権と異なり、同時履行の抗弁権は第三者に行使できません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
民法第 545,546 条です。契約解除の効果として原状回復義務が生じ、546 条において 533 条が準用されるため、互いに同時履行の抗弁権を行使できます。

以上より、正解は 5 です。

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