問 題
行政機関相互の関係に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。
1. 行政機関がその権限の一部を他の行政機関に委譲(移譲)し、これをその行政機関の権限として行わせる権限の委任について、権限の委譲(移譲)を受けた受任機関は、委任機関の行為として、当該権限を行使するとするのが判例である。
2. 行政法上の委任は、民法上における委任と異なり、委任によって権限が委任機関から受任機関へ委譲(移譲)されるものの、なお委任機関は当該権限を喪失せず、引き続き当該権限を行使することができると一般に解されている。
3. 法定代理は、法律によってあらかじめ他の行政機関が本来の行政庁の権限を代行することが定められていることから、法定代理によって権限を行使することになった代理機関は、被代理機関の代理として権限を行使することを明らかにする必要はないと一般に解されている。
4. 補助機関が、法律により権限を与えられた行政機関の名において権限を行使することをいう専決は、法律が定めた処分権限を変更することになるため、法律による明文の根拠が必要であると一般に解されている。
5. 上級行政機関が法律が定めた下級行政機関の権限を代執行(代替執行)する場合、実質的に法律が定めた処分権限を変更することになるため、法律による明文の根拠が必要であると一般に解されている。
解 説
選択肢 1 ですが
権限の「委任」において、受任機関は「自己の名と責任において」権限を行使します。もとの行政機関の名で事務を処理するのは「代理」です。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
権限の「委任」において、委任機関は「権限を失います」。「なお当該権限を喪失せず」というわけではありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
民法の代理で顕名主義がとられており、行政法上の代理の場合にも、代理機関は被代理機関の代理として権限を行使することを明らかにする必要があるとするのが通説です。「明らかにする必要はないと一般に解されている」わけではありません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
専決は、外部的にはあくまで本来の行政庁の名と責任でなされます。単なる内部的な事務処理の分配にすぎず、権限の委任と異なり、法律の根拠は必要ありません。
選択肢 5 は妥当です。
以上より、正解は 5 です。
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