問 題
政策過程に関するア~エの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。
ア. H.サイモンの唱えた満足モデル(satisfying model)では、選択肢の検討は一挙にではなく逐次的に行われ、逐次的な探求の途上で一応納得のできる結果をもたらすと思われる選択肢が発見された時点で探求は停止されるため、最善の選択肢を発見することにはこだわらず、その選択肢で満足するとされる。
イ. A.エチオーニの唱えた混合走査法モデル(mixed scanning model)は、組織の有限な資源を効率的に活用するため、影響力の甚大な政策についてのみ、走査法で現実性の高いごく限られた数の選択肢を選んで綿密な分析を加え、それ以外の政策案の立案はインクリメンタリズムに委ねるとするモデルである。
ウ. G.アリソンの唱えた組織過程モデル(organizational process model)では、省庁はそれぞれ一定の問題を処理することが期待されており、それを独自に、あらかじめ決められた標準作業手続に従って処理する。このモデルによれば、組織の標準作業手続は頻繁に再検討されるため、過去の決定を調べることによって組織の行動を把握することができないとされる。
エ. M.リプスキーの唱えたストリート・レベルの行政職員(street-level bureaucrats)とは、ケースワーカーや学校教員など第一線で政策の実施に携わっている行政職員のことである。リプスキーによると、これらの行政職員は、政策の対象者である住民と直接対応するが、彼らには法の適用に当たっての裁量は与えられていないため、住民の生活に大きな影響を与えることは少ないとされる。
1. アイ
2. アエ
3. イウ
4. イエ
5. ウエ
解 説
記述 ア は妥当です。
サイモンの満足モデルについての記述です。
記述 イ は妥当です。
エチオーニの混合走査法モデルについてです。
記述 ウ ですが
G.アリソンは、政策決定過程を3つのモデルに分類しました。組織が完全に合理的個人と同様に、合理的に政策を決定するモデルである「合理モデル」と、現実に近い2つのモデルである「組織過程モデル」及び「組織内政治モデル」です。
組織過程モデルは、組織が、一定の任務を割り当てられた下位組織の緩やかな連合体であり、それぞれの下位組織が決められた手順に従い問題処理を行う、というモデルです。過去の決定を繰り返す傾向があり、また、相互に矛盾する二つ以上の決定を同時にすることがあるという特徴が指摘されました。「組織の標準作業手続は頻繁に再検討される」わけではありません。記述 ウ は誤りです。
記述 エ ですが
ストリート・レベルの行政職員=対象者との直接的な接触を、日常業務としている行政職員のことです。例)お巡りさん、ケースワーカー。リプスキーは、この主の行政職員が、多様で複雑な現実問題に対処しており、「法適用の裁量」・・・法令や通達を、現実に柔軟に適用、「エネルギー振り分けの裁量」・・・何に力点をおくか、柔軟に決定(特に、エネルギー振り分けの裁量があるのがストリート・レベルの行政職員の、大きな特徴)という特徴を分析しました。「法の適用に当たっての裁量は与えられていない」わけではありません。記述 エ は誤りです。
以上より、正解は 1 です。
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