公務員試験 H25年 国家一般職(化学) No.10解説

 問 題     

気体の圧縮因子 Z は、圧力 p , モル体積 V 、気体定数 R、絶対温度 T を用いて

と定義される。

図は、ヘリウム、窒素、メタンについて 273 K における Z の圧力依存性を表したものである。図中の ㋐、㋑、㋒ に当てはまるものの組合せとして最も妥当なのはどれか。なお,次の式は、ファンデルワールスの状態方程式と呼ばれ実在気体の状態を表す式としてよく用いられる。

ここで、a、b は気体に特有な定数であり、各気体の a、b 及び沸点は表のとおりである。

㋐ ㋑ ㋒
1.ヘリウム メタン 窒素
2.窒素 メタン ヘリウム
3.窒素 ヘリウム メタン
4.メタン 窒素 ヘリウム
5.メタン ヘリウム 窒素

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

【状態方程式における 理想と実在の違い】
ファンデルワールス力の状態方程式に関して、理想気体の状態方程式と比較した時の違いは 2 点あります。「p」が「p+a/V2」 となる点と、「V」が「V-b」となる点です。これはそれぞれ「実在気体の分子間力の存在」が「+a/V2」、「実在気体の固有体積の存在」が「-b」という意味です。
 
【実在気体が理想気体に近いふるまいをする条件について】
そして、実在気体が理想気体に近いふるまいをするのは「高温・低圧」の時なのですが、それはなぜかといえば、高温であれば分子間力の存在をほぼ無視できるからです。低圧であれば体積が大きく分子固有の体積の存在をほぼ無視できるからです。

以上が、状態方程式、及び理想気体と実在気体についての基礎知識となります。これをふまえて本問を考えると、まず表における「沸点」は「分子間力の大小」を教えてくれていると読み取れます。沸点が高い方が分子間力は大きいと考えられます。

温度は一定なので、p が小さい時、つまり低圧の時「分子固有の体積」の影響はほぼ無視できますが「分子間力」は相対的に大きく影響します。

ここで Z = pV/RT の RT にファンデルワールスの状態方程式を代入してみると

つまり、低圧において「分子間力の影響が大きい分子」ほど「(P+a/V2)の項の影響が大きい」→ 分母が大きくなる Z < 1 方向にずれるはずであると考えられます。分子間力の影響が大きい=沸点が高いと考えられるため一番下にぐわっと落ちている ㋒ がメタンと考えられます。これで正解は 3 と推測できます。

以下、他の気体について補足します。㋐ について 窒素であるとすると、まず低圧の時、多少は下に落ちているのではないか?と考えられなくはないです。

そして、高圧の時は分子固有の体積 で b の大小が問題になるはずです。「傾きの大きさ」に注目すれば、㋒ が一番大きく、㋑ が一番小さいことが読み取れます。図をさらに延長していくと、以下のようになり、b の大小が 高圧時に一番影響を受け、かつ、Z が1より大きくなるはず です。

よって矛盾のない組合せと考えられます。

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