公務員試験 H25年 国家一般職(教養) No.35解説

 問 題     

帝国主義の時代に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.19 世紀末になると、欧米先進諸国は、石炭と蒸気力を動力源に第 2 次産業革命と呼ばれる技術革新に成功し、巨大な生産力と軍事力の優勢を背景に、アジア茜アフリカ、更には太平洋地域を次々と植民地に設定した。この植民地獲得の動きを帝国主義といい、植民地には工業製品の供給地として多くの工場が建設され、世界全体が資本主義体制に組み込まれた。

2.欧州列強諸国は、帝国主義政策の競合から、ドイツなど古くからの植民地保有国とイタリアなど後発の植民地保有国に分かれて対立し、ドイツ・フランス・イギリスの間では三国協商が、イタリア・オーストリア・ロシアの間では三国同盟が結ばれた。こうした列強の二極化は、小国が分立するバルカン半島の民族主義的対立を激化させ、同半島は「ヨーロッパの火薬庫」と呼ばれた。

3.イギリスは、アイルランドでの自治要求の高揚に直面した。20 世紀初めに、アイルランド独立を目指すシン = フェイン党が結成され、その後、アイルランド自治法が成立したが、イギリス人の多い北アイルランドはこれに反対してシン = フェイン党と対立し、政府は第一次世界大戦の勃発を理由に自治法の実施を延期した。

4.帝国主義国の圧力にさらされた清朝支配下の中国では、日本の明治維新にならった根本的な制度改革を主張する意見が台頭した。その中心となった儒学者の康有為は、西太后と結んで宣統帝(溥儀)を動かし、科挙の廃止、立憲制へ向けての憲法大綱の発表と国会開設の公約などを実現させ、近代国家の建設に向けての改革に踏み切った。

5.イギリスの統治下にあったインドでは、近代的教育を受けた知識人が増加するにつれイギリス支配への不満が高まり、知識人の中でも英貨排斥、自治獲得などの急進的な主張をする人々の主導によってインド国民会議が創設された。これに対しイギリスは、ベンガル分割令を発表し、仏教徒とキリスト教徒の両教徒を反目させて反英運動を分断することによって事態の沈静化を図った。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが、産業革命で生産力が向上した結果、原材料、市場不足に陥ります。そのため、原材料供給地 及び 市場獲得のための植民地確保への動きの現れとして、各国、帝国主義政策がとられるようになりました。

従って、「植民地に、供給「地」として工場が建設された」わけではありません。供給先であり、また、原料の供給源として植民地獲得の動きが広まっていった といった記述が正しいです。

選択肢 2 ですが、三国協商は「ドイツの勃興を恐れたロシア・フランス・イギリスの協調関係」です。こちらにドイツが入っているため、誤りです。ちなみに、三国同盟は「ドイツ、イタリア、オーストリア」です。ドイツとロシアが逆です。

選択肢 3 は、妥当な記述です。

選択肢 4 ですが、西太后は保守派です。『光緒帝』と結んで康有為は”戊戌の変法”と呼ばれる改革を進めようとしましたが、西太后らの反感を買い、戊戌の政変で失脚しました。改革の内容については、妥当な記述です。

選択肢 5 ですが、ベンガル分割令で反目させようとしたのは、ヒンドゥーとイスラムです。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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