問 題
近代の哲学者の思想に関する記述として最も妥当なのはどれか。
- パスカルのいう「人間は考える葦である」は人間を一本では生きられない群生する葦にたとえることで人間は国家や社会を離れては生きられない社会的な動物であるという考えを表したものであり彼はこの考えをもとに国家の成立に深くかかわる正義と友愛の徳について論じた。
- ベーコンのいう「知は力なり」は真理とは実生活に役立つかどうかにかかわらず絶対的な力をもつ超越的な存在であり先入観や偏見に満ちた自然界を観察することに意味はないとする考えを表したものである。こうした絶対的真理を重視する考えから彼は演繹法を唱えた。
- ルソーのいう「自然に帰れ」は自然状態は不平等で闘争的なものであるが政府の介入を最小限にしてそうした不平等な状態に戻ることが自由競争を生み社会の発展につながるという考えを表したものである。この考えは絶対王政を批判するものとして名誉革命に影響を与えた。
- サルトルのいう「実存は本質に先立つ」は人間は事物のようにあらかじめ決められた本質にしたがって存在するのではなく自らが自らの本質をつくりだしていく存在であるという考えを表したものであり彼は人間の自由と責任実存の在り方を論じた。
- ミルのいう「満足した豚であるよりも不満足な人間であるほうがよい」は物事に満足しきってしまうと人間は思索をやめ本能だけで生きる愚かな存在になってしまうという考えを表したものであり彼はこの考えを発展させ理性によって情念や欲求を制御する禁欲主義を唱えた。
正解 (4)
解 説
選択肢 1 ですが、「人間は考える葦」とは、「自然において脆弱だが、思考する存在として偉大である」といった意味です。「社会的な動物」という考えではありません。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが、ベーコンといえば、「観察と実験を重視」し、「帰納法」を唱えた人です。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが、ルソーが影響を与えたのはフランス革命(1789)です。名誉革命(1689)ではありません。よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は、妥当な記述です。
選択肢 5 ですが、ミルが唱えたのは質的功利主義です。禁欲主義ではありません。よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 4 です。
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