公務員試験 H24年 国家一般職(化学) No.44解説

 問 題     

液相反応プロセスに関する次の記述の㋐ ㋑ に当てはまるものの組合せとして最も妥当なのはどれか。

「次の反応式で表される液相反応は、原料成分 A についての一次反応である。

A → B

A の反応速度-rA は 、A の濃度を C[mol/m3]とすると

-rA =  kCA (k は反応速度定数)と表せる。この反応を、完全混合流れが仮定できる体積 V [m3] の連続槽型反応器で行うことを考える。

A の濃度が 1.2kmol/m3 の原料溶液を、体積流量 0.30m3/min で反応器へ注入し一定の温度で反応させた。この温度での k は0.25min-1 である。この反応が定常状態であるときの A の物質収支は、反応器出口における A の物質量流量を FA [mol/min]とすると

360 =  FA ㋐ rAV と表せる。また、A の反応率を80%以上にするための最小の V は ㋑ m3である。」

㋐  ㋑

  1. +  4.8
  2. +  7.2
  3. -  3.6
  4. -  4.8
  5. -  7.2

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

【㋐の符号について】
物質収支の基本式をまず思い出します。定常状態において「流入量ー流出量+反応量 = 0」です。

本問において、流入量は
1.2 kmol/m
3 × 0.30m3/min
= 1200 × 0.30 mol/min
= 360 mol/min です。流出量は FA です。反応量は +rAV です。

以上より
360ーFA+rAV = 0、つまり、360 = FAーrAV です。正解は 3~5 です。

※※反応量 rAVの符号について補足
「反応量は rAV と知識として覚えていてもよいのですが、本問の符号について
「減少」してるのに+でよいのかと混乱するかもしれません。本問では、ーrA  = kCA と問題文で定義してあり右辺は明らかに正です。よって「rA の符号は 負」です。

本問において、「反応量」とは A の「減少量」です。つまり負の値であってほしい量です。そして V が正だから「+rAV」 とすれば全体の符号は負です。よって、「+rAV」がAの「減少量」を表しているという流れで符号を判断するとよいと思われます。

ちなみにですが、化学工学の試験で『反応器中での反応速度を( – rA ) ( > 0 )・・・ 』
といった記述を見慣れていると理解がしやすいかもしれません。
※※補足終了。

【㋑について】
問題文より、-rA = kCA かつ ㋐より 360 = FAーrAV です。代入して一つの式にしてみます。360 = FA + kCAV です。

反応率を 80% とすると、流入した 360 のうち 80% が反応して消失しているのだから流出するのは 20% です。よって、FA = 360 × 0.2 = 72 です。k は問題文より0.25 です。

CA ですが、反応が起きる時の A の濃度とは「装置内濃度」といえます。そして「完全混合流れ」 なので「装置内濃度 = 流出時濃度」 です。

流入時の濃度が 1.2kmol で 80% 消失し、流出時残っているのが 20% です。よって流出時濃度は
1.2kmol × 0.2
= 1200 × 0.2
= 240 mol/mです。

従って、「360 = FA + kCAV」  に FA = 72、k = 0.25、CA = 240 を代入すれば、360 = 72 + 0.25 × 240 × V です。288 = 60V となるため、V = 4.8 です。

以上より、正解は 4 です。

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